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「……あ、暑い……おれ様が……この偉大なるバギー様が……砂漠で干物になるなんて……!」
青い髪は砂まみれ、赤い鼻も砂でカピカピ。バギーの服は汗と砂でバリバリに固まっていた。
彼はここ数日、砂漠をさまよい、飲み水も食料も尽きてしまったのだ。そもそも、なぜこんな砂漠に一人でいるのかと言えば――
「お、オアシスの商人に……騙されやがったな……! おれ様の宝を……ぐぬぬ……!」
バギーは喉がからからで、声もかすれ気味。
そのとき、遠くでキャラバンの鈴の音がした。ラクダの蹄の音が近づき、砂ぼこりの向こうから姿を現したのは――青い髪を風になびかせる、王女ビビだった。
「……えっ、ちょっと! 誰か倒れてるわ!」
ビビはすぐにラクダから飛び降り、バギーに駆け寄る。
「あなた、大丈夫ですか! って、鼻が赤い……ピエロ?」
「ピ、ピエロじゃねぇ……! か、か……かわいいお嬢ちゃん……水を……水をくれぇ……」
ビビは慌てて水筒を取り出し、バギーの口に水を少しずつ注いだ。
喉に水がしみ込み、バギーの目がうるんだ。
「……生き返った……! 天使かお前は……! いや、女神か……!」
ラクダのキャラバン隊の護衛たちは、砂まみれの男が突然泣きながら手を合わせる姿に引いていたが、ビビは苦笑して肩をすくめた。
その後、バギーはキャラバンに保護され、日陰で休むことができた。
体力を回復した彼は、相変わらず偉そうに座りながらも、何度もビビにお礼を言った。
「お嬢ちゃん……いや、ビビ姫って言ったか? おかげで命拾いしたぜ……!」
「ふふ、いいんですよ。砂漠では助け合いが大事ですから。でも、どうしてこんなところに一人で?」
「そ、それはだな……ちょっと、宝探しの途中で……地図を逆さに読んじまった……いや、まあそんなことはどうでもいい!」
バギーは虚勢を張るが、ビビはくすっと笑った。
彼の鼻が赤く光るたび、どこか憎めない雰囲気がある。
キャラバンと共にオアシスの村に着くと、バギーはしばらくそこで世話になることになった。
夜、星空の下でビビと並んで座る。
「ねえ、バギーさん。あなた、海賊なんでしょう?」
「ま、まあな……! おれ様は偉大なるバギー海賊団の船長だ……世界を震撼させる大海賊よ……!」
「でも……今は砂漠で迷子だったんですね?」
「ぐっ……そ、それは……!」
ビビはくすくすと笑う。
バギーは顔を真っ赤にして横を向いたが、ふと、砂漠の夜風が二人の間を通り抜けた。
そのとき、遠くで砂嵐が起き、キャラバンの警備隊が騒ぎ出す。
砂の中から現れたのは――巨大な砂ワニだった!
「ひぃぃぃぃ! なんだあれはぁぁぁ!!!」
「バギーさん、下がって! 護衛の人たちが戦うわ!」
だが護衛の数は少なく、砂ワニはあっという間に隊列に突っ込んだ。
バギーは震えながらも、ふとビビが自分をかばうように立ったのを見て――
「……くそっ! おれ様がやるしかねぇかぁぁぁぁ!!!」
叫ぶと同時に、バギーはバラバラの実の能力で両腕を飛ばし、砂ワニの目を狙った。
驚いた砂ワニが暴れて砂を巻き上げる中、護衛たちが一斉に槍を突き立てる。
砂ワニはついに倒れ、村は守られた。
その夜、焚き火の前でビビは微笑んだ。
「やっぱり、海賊でも勇気はあるんですね」
「ふ、ふん! おれ様は偉大なるバギー様だからな……! お前を守るくらい当然だ!」
赤い鼻が火に照らされ、ビビは思わず笑ってしまう。
翌朝、キャラバンは出発の準備をし、バギーも船を目指して砂漠を離れることになった。
ラクダの上から、彼は何度も振り返って手を振った。
「またな、砂漠のお嬢ちゃん! おれ様の大活躍を海で聞くことになるぜぇ!」
「はい、バギーさん。砂漠に来るときは、もう迷子にならないでくださいね!」
砂漠の風に吹かれながら、バギーは鼻を高く上げた。
そして心の中で、ひそかに思った。
(……おれ様、ちょっとだけ……また会いたいかもな……)