テラーノベル
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翔太が俺の顔をじっと見つめて、ふいに俺の頬を撫でる
「どうした?」
「蓮さんってすごく格好いいよね……モテそう」
しみじみとした言い草がなんだか可笑しい
「まぁ、モテるのところは否定しない」
「やっぱり……今は恋人いないの?」
今さらになって気になったのかと思うが、少し抜けているところもあるようだ
「いたらあそこにはいないよ。ちゃんとフリーだから安心して」
「そっか」
本当に安心したように息を吐く
「今までの恋人は男の人?女の人?」
「一応両方。最初の恋人が学生時代に付き合った女の子で、その時に俺はこっちじゃないんだなって気づいて、そっからは男」
「ふぅん」
「翔太は?」
「俺は初恋の人が男だったから。好きな人はいたけど言えなかったし、恋人はできたことない」
「今遊んでる友達とかは知ってるの?」
「んーん、言ってない。俺のこと知ってる友達はいない」
「それであのバーに?」
「うん」
「そっか」
「………この年で経験ないってやっぱいや?」
「そんなことないよ。俺らみたいなのは中々周りに言い出せないし、そういう人だって多いんじゃない?」
「そっか……よかった」
俺としてはむしろ嬉しいくらいだ
「翔太がいいって言ってくれるなら、俺はしばらくは翔太に時間を使うつもりだけど?」
「そうなの?」
これはどういうことか分かってないな
「うん、真剣に口説くつもりだからね」
「え…………」
真っ直ぐに伝えれば、びっくりした顔をする
「この数時間話してて、翔太がすごく可愛らしいことがわかったから。もちろん見た目だけの話じゃないよ。翔太のことをもっと知りたいなって思ってる」
「そう、なんだ……………」
「あ、でも安心して。翔太が嫌がることはしないし、返事を迫ったりはしないから。ゆっくりね」
「それは、心配してないけど。あの、えと……」
実感が湧いてきたのか、ぶわわっと顔が赤くなっていって目線が泳ぐ
「ふふふ、楽しみにしてて」
「うわぁ…………」
「また今度デートしようね」
「…………うん」
多分、翔太はもう俺のことを好意的に思っているとは思うけど
現にこれだけハッキリと好意を伝えても、俺の腕から逃げようとはしない
ただ、一度冷え切った心をちゃんと解いてあげるためにも、少し時間を使って付き合う前のドキドキも楽しむ方がいいだろう
警戒心を解いてくれたとはいえ、すぐに付き合うなんて話になれば、翔太はきっと近い未来で不安になる
「可愛いね、好きだよ、翔太」
「いま、そういうの、だめ……」
「え〜?笑」
「沸騰しちゃう……」
「ふふふ、わかったよ。撫でててもいい?」
「……ん」
赤くなった顔を隠すように、俺の胸に顔を押し付けながらしがみついてくる
俺は何も言わずに柔らかく頭を撫で続ける
しばらくすると、ぎゅっとしがみついていた力も緩まってきた
密着したことで、少し自分より高い俺の体温が体に馴染んできて、眠気が強くなってきたのだろう
「翔太?」
「んぅ〜?」
ゆっくりと顔を上げた翔太の目は半分閉じかけている
「そろそろ寝る?」
「ん〜、眠たい……」
「うん」
「蓮…さん……」
「ん?」
「……ぎゅって……しててね?」
「大丈夫だって、安心しておやすみ」
「………ん、おやすみ」
ゆっくりと瞬きをする翔太のおでこにキスを贈る
一瞬、嬉しそうにはにかんで翔太は夢の中へといざなわれていった
ヘッドライトを消して、翔太をしっかりと抱きしめ直して俺も瞼を閉じた
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