テラーノベル
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「はーい!OKでーす!!!」
「………ふぅ」
思わず吐息が漏れる。
じい、と俺を見ていたマネージャーさんと目が合い、慌てて笑顔を取り繕った。
無理はもう慣れてる。
グループが予想外の速さでどんどん売れていくにつれ、みんな、個人での仕事も増えて、それに比例して自分の時間を減らしていった。一日は24時間しかないから、他のみんなだって頑張ってる。俺たちのために、一日の限られた時間は増えたりしないのだ。
それでも、それがただ嬉しい時期はあっという間に過ぎて、今はもう、やりたいことと出来ることの仕分けを当たり前に日々しなくてはならないほどに時間が足らなくなっている。やりたくてもできなかった心残りが、少しずつ頭の片隅に蓄積していく。そして俺はそれを見ないようにしている。いつか、開いて、それが残らずできるようになるまで。
「阿部さん、大丈夫ですか?もう車出ますけど」
「大丈夫です。回してください」
笑顔で応えるものの、視界が少し、揺れる。
昨夜は急いで寝たつもりだったけど、やっぱり寝不足なのだろう、正直な身体に鞭を打つ。
頑張れ、俺。頑張らなきゃだめだ。
車に乗り込み、しばらくの間、目を瞑る。30分足らずの移動だが、それだけでも休めるのはありがたかった。
「……阿部ちゃん、お疲れ様」
「ん?め…め?」
起こされて、目が覚めると、大好きな人がドアを開いて、外から微笑んでいた。半分夢見心地で、導かれるままに手を差し出し、車外へと出た。
………辺りには誰もいない。
不思議に思っていると、めめが言った。
「待ってたんだよ。お疲れ様」
「あり、がとう……」
「どういたしまして」
めめは柔らかく微笑んで、ドアをぱたん、と閉めた。ロックをかけて、こちらを振り返る。
「めめ……?」
「ぎゅってさせて?阿部ちゃん」
「ん、、、」
めめは腕を開くと、その中に俺を収めた。 めめの心音が聞こえる。温かで確かな熱を感じる。
めめの優しさは肌を通して、俺の中にじわじわと沁み込んでくるみたいだった。甘い気分になる。さっきまで張っていた気持ちが、解けていくのを感じる。
「めぇめぇ、あったかい」
「俺も」
「………うん」
めめは、マネージャーさんから連絡を受けて、ここで俺を待ち伏せてくれていたらしい。生放送もホテルで見て、楽屋でも見て、リハーサルが始まる前に俺に一番にお疲れ様を言いたくてここで待っていてくれたそうだ。
口付けを交わすと、めめは優しく微笑んだ。
「みんなのとこ、行く?」
「うん、でも……もう一回だけ」
不思議そうに首を傾げるめめに、俺からもう一度口付けた。
「ありがと、めめ、大好き」
めめは、少し目を見開いてから、
「俺もだよ」
と、言った。
それから、楽屋に戻るまで、俺たちはずっと手を繋いでいた。
コメント
13件
尊いわあ🤦🏻♀️🤦🏻♀️🖤💚 ほんと大阪来てまでZIP出てくれるの嬉しすぎるけどその反面心配になるからこういうお話癒される☺️

でも💙のお迎えバージョンも読みたくなっちゃいますよねー。
捻って💙が迎えにくるバージョンも考えたけど、ここは喜んでくれそうな友人のために敢えてストレートに🖤💚😌