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死んだはずの蓼原(たではら)カンナが私の目の前に現れたことに気付いた時、私の首はもう彼女の手で切断されていた。
血の雨が降ってきて、目の前にいるカンナの白い髪と肌を赤く染めている。
私の視界からは見えないけれど、きっとこの血は私の首から噴き出している血に違いない。
私の顔を覆うその手から伝わる体温は、間違いなく私が知っているカンナのぬくもりだ。
一年前、失ったはずのぬくもりだ。
――私はカンナの事を忘れたかった。
ここから遠く離れた高校を受験して、嫌な思い出の染みついたこの町から逃げて、カンナとの思い出をすべて捨ててしまいたい。
最低な自分の事を、もう思い出したくなかったから。
「そんなの、許されない」
なぜか私の目に、カンナが腰にぶら下げる黒いウサギのマスコットが目に入った。
いやに低い声だったけど、その声は間違いなくカンナの声だ。
その声が耳に入った途端、陽だまりのように暖かく、私に笑いかけてくれるカンナの笑顔が鮮明によみがえった。
だけどいま目の前にいるカンナの笑顔は、まるで氷のように冷たかった。
気付けば血の雨なんかもう降ってなかった。
私の視界は、ただ目の前にいるカンナの冷たい顔でいっぱいになっていた。
「……………………カンナ?」
「迎えに来たよ、美雪ちゃん」
遠野美雪は、死んだはずのカンナに殺された。