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さて、次に行くとするかな。
俺がチエミ(体長十五センチほどの妖精)の方に目をやると、チエミはそこにはおらず、いつのまにか俺の頭の上にいた。
「ナオトさん! 私は、特別に十五体作られた『妖精型モンスターチルドレン』の一体です! 故《ゆえ》に私は『心の暴走』状態にはなりません! なぜなら、私たち『妖精型モンスターチルドレン』は特別な存在だからです!」
「えっ? そうなのか?」
「はい! そうです! ですが、私はナオトさんの頭の上を独占《どくせん》したいので、ここで寝《ね》ることにします! よろしいでしょうか!」
「え? うん、まあ、いいけど」
「本当ですか! ありがとうございます! では、今から布団《ふとん》を作りますね!」
「ああ、早く寝《ね》ろよ……って、お前、今なんて言った?」
「今から布団《ふとん》を作ると言いましたけど、それがどうかしましたか?」
「今から……ってことは材料は……」
「もちろん、ナオトさんの髪《かみ》で作ります。何か問題でも?」
「大ありだ。というか、自分の布団《ふとん》があるだろう?」
「えっ? 私はいつもナオトさんの頭の上か、髪《かみ》の毛の中で寝《ね》ていますよ?」
「お前は俺の頭を何だと思ってるんだ……」
「ベッドです!」
「マジかよ……。で? 布団《ふとん》はどうやって作るんだ?」
「風の力で髪《かみ》をまとめるだけです!」
「そっか。なら、よし」
「本当ですか!」
「ああ、本当だ。ただし、どうしても髪を切りたい時は言ってくれよ?」
「そんなことしませんよ! もったいない! そんなことをするくらいなら、私が全部食べます!」
「お、おう」
さすがに、それはどうかと思うぞ。
「ナオトさん、心の声が丸聞こえですよ?」
「おっと、そうだったな。モンスターチルドレンは心の声が聞こえるんだったな。あー、その、今のは冗談だよ、冗談」
「そうですか……。それなら、いいのですが。では、私はこれで失礼します! おやすみなさい!」
「ああ、おやすみ。チエミ」
チエミは俺の髪《かみ》の毛の中に潜《もぐ》ると、スウスウと寝息を立て始めた。
俺の髪《かみ》って布団《ふとん》代わりになるのかな? うーん、まあ、いいや。
俺がそんなことを考えていると、背後から声をかけられた。
「ご主人、少し休憩にしよう」
俺が声のした方を見ると、ミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)が白いマグカップを持った状態でこちらに歩いてきた。
「ああ、そうだな。ちなみに、その中身はなんだ?」
「え? あー、これ? えっとねー、この中には僕のエキスが入ってるんだよ」
「へえ、そうなのか。でも、なんか今はそういう気分じゃないからな……」
「まあまあ、そう言わずに。ね?」
「いや、だから……」
「ご、ご主人! 後ろ!」
「えっ? 後ろ? 後ろに何か……」
俺は後ろを見たが、そこには眠《ねむ》っているミノリ(吸血鬼)たちの姿しかなかった。
どうやら俺はまんまとミサキに騙《だま》されてしまったらしい。
振り返れば、ミサキにマグカップの中身を無理やり飲まされることは確定している。
しかし、せっかくミサキが俺のために持ってきてくれたものを飲まないわけにはいかない。
そう思った俺は、とりあえず振り返ることにした。
「……ご主人」
「なんだ? ミサキ」
「ご主人はモンスターチルドレンじゃない僕たちのことも大事にしてくれる?」
「な、なんだよ、いきなり」
「いいから、早く答えて」
「……まあ、その……俺はお前たちのことも好きだよ」
「じ、じゃあ、僕のことは好き?」
「ああ、好きだ」
「じゃあ、これを飲んでくれる?」
「何かおかしなものが入っていないのなら、飲んでやらんこともない」
「大丈夫、大丈夫。媚薬(びやく)が一滴《いってき》だけ入ってるだけだから」
「そうか……って、今ので完全に飲みたくなくなったぞ」
「そっか。じゃあ、これは……僕が飲むよ」
「やめろ! ミサキ!」
俺がミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)を止めようとすると……。
「うん、分かった。はい、どうぞ!」
「……うぐっ!」
俺は無理やり媚薬《びやく》入り(?)の飲み物を飲まされてしまった。しかも、全部……。
ミサキは空《から》になったマグカップをありえない速度で台所に行き、それを洗面台に置くと、俺のところに戻ってきて、こう言った。
「さぁ、ご主人。僕を襲(おそ)ってもいいんだよ?」
ミサキは俺の欲望(性欲)を受け入れる準備をするかのように両手を広げた。
その時、俺の頭の中は目の前のミサキのことでいっぱいになっていた。
ミサキの声が俺の頭の中に響《ひび》いてきて、俺にこう囁(ささや)く。
さあ! 今こそ欲望を解放するのだ! と。
俺はミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)の方に吸い寄せられるかのように向かうと、そのまま、ミサキの腕《うで》の中に飛び込みそうになった。だが、その時。
「……あなたは、それでいいの?」
俺の脳内《のうない》でそんな声が聞こえた。
そして、その瞬間《しゅんかん》、時が止まった。
「お前は……誰だ?」
「私はあなたの守護霊……いえ、守護天使です」
「守護……天使?」
「はい、そうです。あなたの今の状況をなんとかするようにと神さまに命じられたので、時間を停止させました」
「そ、それで? 俺は何をすればいいんだ?」
「私と完全契約してください。そうすれば、あなたの今の状況をなんとかしてみせます」
「……それはありがたいな。だけど、これは俺が解決しなくちゃいけないことだ。だから……」
「それ以上は言わなくて結構です。ですが、このままだと確実に、この幼女と交《まじ》わることになりますよ?」
「……それは、まあ、なんとかするよ。だから、お前は何もするな」
「私に命令するとは、いい度胸《どきょう》ですね。……分かりました、この件はあなたに任せます。しかし、いったい何をするつもりですか?」
「諦めないのが、俺の長所だ」
「『ブ○クロ』ですか?」
「何で知ってるんだよ……」
「さぁ? どうしてでしょうね。あっ、ちなみに私には名前がないので、今度会う時までに考えておいてくださいね」
「分かった。じゃあ、またな。俺の守護天使」
「はい、では、また」
彼女がそう言うと、時が進み始めた。さあて、なんとかしないといけないな。
俺は媚薬《びやく》で頭がおかしくなっている自分にそう言い聞かせると、彼女と話している間に思いついた【作戦】を実行することにした。