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私の家庭教師はとても優秀な人だった。准教授とやらで将来は教授になることを夢見ているようだった。そして、その夢が現実に近づいたようだった。私の中学受験を手助けしてくれた、その先生は家庭教師の仕事を辞める。
最後の授業の日こう言われた。
「あやねちゃん、私も勉強頑張るから一緒に頑張ろうね。同じ県だから一緒にご飯食べたりもしよう。」
その家庭教師の先生とは家族ぐるみで中よくなり、一緒にご飯を食べたり、先生の生まれたばかりの子供の面倒を母や父が見たりすることもあった。
その先生が本格的に教授になるために、引越しをするらしい。県は同じだが、少し距離がありどうしても会いにくくなる。だから、家庭教師の先生を変えることになった。新しい先生の名前は山寺まなみ先生(やまでら まなみ)。まなみ先生とは話があい、勉強中もたくさんのことを話して愚痴も聞いてもらえた。面白い話もたくさんしてもらえた。まなみ先生に救われたことも多くあったと思う。でも、それだけでは無理だった。何度も死にたいと思い、カッターや時には包丁すら持った。両親の目を盗んで。その度にあの死神が来て、私の死を囁き、そして死へと誘った。しかし、いざとなると手は動かない。いや、正確には震えるだけで肝心なことをしない。白くなった肌を紅に染めることはしなかった。
真夜中、私はまたカッターを持つ。
「今日は?ヤらないの?」
「うるさい!今度こそ、ヤるんだ。絶対、絶対、絶対。」
カッターを握って震えてばかりいる手に力を加える
「ほら、ヤるんでしょ?」
確かに決めたはずだ。決意したはずだ。私の梅野あやねの人生に句点を打って終わらせると。
「どうしたの?ほら、ヤりなよ。」
それでも、手は震えるだけ。紅の液体が噴き出すことも白い肌から垂れ流れ、紅に染めることもなかった。そうこうしているうちに、母が起きてきた。急いでカッターを隠しベッドに潜り込み、母が寝るのを待とうとしたら、死神の声が聞こえなくなった。いつのにか私は寝てしまったようだ。結局、またできなかった。
次の日の朝、学校で雪子に、
「うわぁ、機嫌悪そ。絶対寝不足じゃん。何?遅くまでアニメでも見てた?」
その質問に私は、
「あはは、せーかい。」
平気で嘘をつく。
「私も最近寝不足だよー。」
「そっちは何?推しのK-POPアイドルのライブ配信でも見てた?」
「あたりー」
私はアニメなどの二次元。雪子はどちらかといえばアイドルなどの三次元が好きだった。そんな趣味があまり合わないように見える二人。それでも会話は途切れず、紡がれ続ける言葉。雪子とする他愛のない会話が好きだった。暗い気持ちを忘れさせてくれた。
そんな、話してて辛さを忘れさせてくれるまなみ先生や雪子は私にとっての支えだった。