ここ数ヶ月、ほぼ毎日しているように、私は今日もカッターを持ち左手首にあてる。
「で、今日は?」
あの声が、死神の聞こえた。
「黙って!ヤるから!今日こそは、ヤるから」
「あのねぇ、その答え聞き飽きたんだけど?死にたがりのイクジナシちゃん。」
こんな会話が日常になった。
「はぁ。」
大きなため息が聞こえる。
「後少しで中学一年生も終わりだよ。なに?もしかしてとりあえず三年なんて馬鹿なこと考えてるの?」
「そんなことない。」
本当だ。そんなことない。ただ、誰にも相談できないまま、少しづつ時が流れついには進級が近づいていた。
「もう、寝る。明日も学校があるから。」
明日も学校がある。馬鹿みたいな言い訳だ。学校が嫌だから、辞めようとしているのに、また明日も行く前提で考えてしまう。
「そう。」
「ねぇ、あなた、私と会ったことある?あなたの声、どこかで聞いたきがするの。」
「あると言えばある。けど、ないと言えばない。」
「何それ。少しはあなたについて教えてよ。」
日に日に死神の存在感は増していっている様な気がする。最初に会ったころは、気配で存在しているのはわかる程度だった。でも今は違う。確実に居るのだ。もう少しで姿形が見えるのではないかというほどに存在感が強くなっている。
「死神だよ。私が言えるのはそれだけ。」
「そう。」
「ねぇ、あなたは楽になりたいの?なりたくないの?」
人の質問にはろくに答えなかったくせに自分は質問するのか。まるで子供のわがままを聞いているような気持ちだ。
「なりたい、でも最近頑張ろうかなって思い始めた。」
そう、私はなんとか頑張ろうと思い始めていた。理由は
「中学三年生の終わりの春休み。ニュージーランドに行けるの。そして、高校2年生ではカナダに行ける。」
私は海外に行きたいとずっと思っていた。
「そっか、でも私が来てるってことの意味わかってる?」
「うん、私は常に死にたいと思ってる。」
「でも全然死ねてない。」
「うるさい。」
「ねぇ、なんで楽になろうとしないの?私は…だよ。私は…のこ…よく、…る。」
「え?」
ノイズのような音が混じり死神の声は所どろ聞こえなかった。おそらく1番大事なところも。それを最後に死神の声は聞こえなかった。