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過去の歴史を改竄する事は禁忌に値する。 それは時間遡行、複製体の生成も同じ。

魔術や妖術、呪術や奇術、錬金術などに適応される大まかな規則であり、秩序を乱さぬ為の布石でもある。

錬金術に関しては、また別の禁忌が存在する。


――― 『可逆魔術』の所有者である “八重垣 肇” は、戦国時代を代表する武将の一人 “織田信長” にその術を気に入られ、常に幾度も傍に置かれていた。

少しの時間が空けば、八重垣の得意である『並行世界』を映し出し、その行く末を見ている。

八重垣からすればそれの何が面白いのか全く分からなかった。ただ似たような世界を眺めるのは中々に飽きる。

しかし、信長は見るのを辞めなかった。


「……信長様、どうしてそんなに『並行世界』を覗くのですか?」


八重垣は遂に我慢出来ずに聞いてしまった。四六時中眺める姿を見て、聞かざるを得なかった。

この薄暗い座敷牢の中で、信長は見続けていた。


「………そうだな、この鏡を少し傾けるだけで様々な面が見える。未来で俺が戦に勝利する面、民が裕福に暮らす面、過去に起きた騒動が見える面。 そして―――、俺が死ぬ面 」


並行世界のは、世界中の人間の指を借りても数えられない程に存在している。

いつ以下なる時に生成され、いつ以下なる時に抹消されるのか把握する事は不可能。故に、並行世界の管理は人類の身に余る権限。


「その面が、凡そこの世界でも同じように起きるのは薄々勘づいている。……肇よ、お前はこれからどうしたい?」


そう言って、信長は持っていた手鏡を地面に伏せて、八重垣に問う。

信長に付き添えば、十中八九、八重垣は死に至るだろう。逆を言えば、今ここで信長と袂を分かてば寿命を全う出来るかもしれない。

―――正直、死ぬのは怖い。

折角、この世に生を受けて産まれてきたのに、まだ成人になるよりも前に死ぬのは恐ろしい。

しかし、それよりもっと恐ろしいのは『自身の本当の気持ち』を裏切ることだ。


「………っ私は、信長様に全てを捧げた身。例えどのような結末を迎えようと、私は信長様について行きましょう!!」


目から大粒の涙が溢れ出す。遠の昔に無くしたはずの、悲しいと言う思い。

―――この誓いは生涯永劫消える事は無いだろう。例え、先の先に繋ぐ未来で何が起きたとしても。


「……はっ。この馬鹿者が、その答えを待っていたぞ!!―――どうせお前の事だ、ずっと悩んでいたのだろう?」


この主は、八重垣 肇の唯一の主である “織田信長” はやはり、君主として申し分のない存在。

民を思い、部下を思う。 こんな完璧な武将が天下統一を前に敗れる事は、絶対にあってはならない。

だから、その面を、その未来を。


「っ私が、信長様を導きます!!なので…!!私も!!正しい道へと導いて下さい!!」


木製で出来た牢獄が焼け落ち、中から一人の君主がニヤリと笑みを浮かべながら歩き出す。

その瞬間から、この世界の進む道は確定した。


かの八重垣 肇がどのようにしてその道を選ん だのか。何故、魔術師と妖術師が決別したのか。そして八重垣 肇の過去、織田信長の結末とは。

残念ながら、この物語ではその全てを語ることは出来ない。 だがもし機会があれば、

また別の物語にて。






「俺の中にある全ての妖力を千里眼に回し、己の肉体と勘のみで場を切り抜ける必要がある……」

「んな事、何度もやって来たわ!!ど阿呆ォ!!」


氷使いの話が本当なら、千里眼が完全に開眼し、選択肢が与えられるのは『必要な魔力の上限に達している』状態のみ。

―――赤ん坊なら、初期魔力量はコップ一杯程度。なら完全開眼に必要な消費魔力も丁度、コップ一杯位だ。


「もし俺の千里眼が、まだ完全開眼していなかったら?複製しただけで、本質を見抜けていなかったら?」


『もっと強い力を得られるのは間違いない。そして今のお前は、代わるはずだった俺の妖力を垂れ流し続けている状態に、惣一郎から渡された例の本の妖力も補充可能』

『………だが考えてみろ。お前、まだ完全開眼してないなら、何故―――』


何故、俺は既に鑑定能力を持っている。


それに、俺はどうやって父親の千里眼を複製した。妖力を使った能力の具現化?そんなものは出来るはずが無いし、聞いたことも無い。

まず俺は千里眼を自らの手で複製したのか。

一体俺は―――、


「………父さんの千里眼の能力?」


千里眼そのものを与えた。複製の移植。または最初からそこに有ったかの様に、時間を改変する。―――世界の事象を書き換える。

この何れかを使用し、俺の眼に力を与えた。

天然の千里眼とは違う、成長途中の人間に与えられた人工の千里眼。 そして、鍛錬や妖術の練習等で、妖力上限と 必要な妖力が釣り合わず、

………不完成な形として開眼した。


「俺は過去に、とっくの昔に選択肢を与えられていたのか……?」


『思い出せぬ………か、あれ程長く一緒に居た俺も同じだ。あの瞬間と、千里眼の部分だけがどうもあやふやでな。俺も思い出せぬ』


「俺が選んだ能力ってのは………一体、何なんだ」


まず一つ目の選択は『人物の鑑定』で間違えないだろう。妖の件も魔術師の件も役に立っていたから。

そして二つ目の選択は―――


「『贋作にせものを、原作ほんものに変化させる』……」


禁忌の術を除いて、俺が父親から受け継いだ術は殆ど成長済み。長年扱うがそれ以上の変化は訪れず、ただ一定の性能を保っている。

父親の背中を見て育つ、父親の技を見て覚える。それは真似るだけとは言え、複製・複製コピーと同等の行為と表しても間違いでは無い。

既に完成した技を複製しても、進化はしない。

されど、成長途中である複製した技であればどうなる。


「………千里眼を与えられた俺は、不十分な形で開眼し、その能力を得た」


本来ならばその時点で止まっていた。複製した千里眼は成長せず、他の術と同じで一定を保ち続ける。

だが、俺は得てしまった。

贋作を原作へと進化させれる能力を、千里眼を与えられた俺はその選択肢を選び抜いた。


「…………行ける」


完全開眼に必要な妖力は、ざっと150万。

それに対し、今現在の俺の妖力貯蔵量は凡そ147万。狂刀神の力と渡された本の追加分も含めて。


「なんだ、余裕じゃないか」


息を吸って吐くだけで、妖力は次から次へと溢れ出す。故に、選択肢は動き始める。

真っ白な部屋、だがそこには何も無く、部屋そのものすら無い場所。いや、部屋と呼ぶことすら出来ない空間。


――― “狂想刀・黒鶫” の氷解銘卿を使用し、 創造系統偽・魔術師を行動不能にした瞬間。 俺の意識は此処へと飛ばされた。


「外で時間が経過している感じは……無さそうだな。まずこの空間そのものが時空に固定されてる……のか?」


此処に来て何時間経ったかは不明。恐らく時間の定義すら存在しないのだろう。 だから俺は、千里眼の答えを導き出せた。

此処には俺だけでなく、俺の中に居た “狂刀神” も飛ばされていた。

しかしその姿はやはり見えず、声とその朧気な存在を感知出来る程度。


『仕方あるまい。俺は既に死人、術とは言え今を生きる存在に加担する事は許されない』


とか言っておいて、こいつはずっと座ってるだけ。そのくらい分かるんだよ、なめんな。

……そんな事を言っている内に、貯蔵量が150万を超えた。狂刀神の反応と俺の中で循環する妖力で分かる。


「『答えは導き出した。俺は第二の能力を以て、次の段階へと俺は進む』」


それは無意識に、狂刀神と同時に言葉を発した。



………そこで、光を見た。 万物を見通し、選ばれた生命に力を授ける。

……光を見た。しかし無情にも、選ぶ知能のない瞬間に授ける。

…光を、見た。それは理を外れた術師に力を授ける。

…………薄らと輝く、ひとつの光を見た。


「 “術の複製” と “物体と複製” か、千里眼も嫌なヤツだな。この状況で俺が選ぶのは、このひとつしか無いってのに」


………希望に答える、光を見た。




「………!!……晃弘さん、氷使いを連れてこの場から離れて下さい!!」


「………兄ちゃんはどうすんだ?」


千里眼の選択を終え、再び現世へと戻ったが、 氷が溶けるのも時間の問題。

ここで氷使いを抱えた晃弘と、創造系統偽・魔術師を連れてどこかへ移動する事は不可能。

ならば、俺が新たに得た能力に、”狂想刀・黒鶫” に秘められた可能性。それら全てを加味して、俺が出来る事は……!!


「―――こうすンだよっ!! 」


俺は凍りついた地面を走り、創造系統偽・魔術師の腰へと手を回して、そのまま妖術を使用する。 魔術師と俺のみ状態限定の、 ………この場から最速で離れる事が出来る妖術を。


「…………ッ空間転移ゲート・オープン!!」


沙夜乃が最も愛用していた、あの魔術を。 憎く、殺すべきである魔術師の技を。

俺は千里眼の能力『鑑定』と『複製』を、狂刀神は絶えない妖力。そして “狂想刀・黒鶫” は神が扱う器として大成した『能力の安定化』。

その全てを使い尽くし、俺は沙夜乃の魔術の一部を、完全に複製した



「………っここは!?」


開かれたゲートは二つ。俺と創造系統偽・魔術師のみを転移させる入口。

その出口は極力被害を少なく済ませ、手短に決着を付けれる場所。かつて俺が初めに戦った、あの場所。


「………この家はもう取り壊しが決まってな。もう誰も住んじゃ居ねぇし、中には何も無い。そこの蔵も全部回収済みで、意味をなさないただの建造物だ」

「ここは俺の父さんと母さんが住んでた家。そして俺が全てを視た場所だ」


「………全てを視た?何言ってるかさっぱり分かりませんが、空間転移の術を使えたのですね」


「違う、これは俺の術じゃない。所詮ただの借り物、過去の遺物を漁って使ってるだけだ」


この場で幾ら暴れようが、周りに被害は出ないだろう。ここは山奥に一件だけ建っている家、他に住民など居ない。

だから、



「………構わない、という訳ですね?ならば、全力で御相手いたしましょう」


「………火以外の妖術は全般使えるな、良いぜ。俺も全力で殺しに行く」



一振りで全てを薙ぎ払う剣を持つ偽・魔術師と、一目で全てを複製する能力を持つ妖術師。

その二人の激戦が、轟音と同時に幕を開けた。

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