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「こんな所で何をしているんですか? その方は……?」
探しに来た母の姿を見咎めて、彼女から身を引いた。
「クリニックのスタッフと会って……、」
答えようとするのに、言い被せるように、
「そんな人と会っていないで、医師会の方々とでも顔合わせをなさい。名医の方たちに顔を知ってもらうせっかくの機会なのですから」
そう、早口でまくし立てる。母は、父を喪っても何も変わりはしないという事実だけが目の前に突きつけられる。
早足で戻って行く母の背中を見送りながら、
「すいません……」
と、誰にともなく口にした……。
それは、わかり合えない親子関係を恥じたからだったのか、あるいは、自分自身の不甲斐なさを謝ったものだったのか、
「……父が亡くなったばかりなのに、あんなことを言うなど……」
口では母を牽制するように呟きながら、心は散り散りに乱れていて、”すいません”という言葉の真意がどこにあるのかも自分でもよくはわからなかった……。