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元貴と若井が並んで歩き出すのを見送りながら、僕は静かに息をついた。
「若井、大丈夫かな……。」
若井の想いを応援する自分と、
若井に優しくするのは僕で、僕が笑顔にしたいと思う自分。
その二つが、ぶつかり合う。
僕は地下駐車場を抜け、タクシーに乗り込んで、
家に着くまで、ずっと若井の事を考えていた。
「ねぇ、りょうちゃん。
俺、ある日突然、元貴が急に消えて、
いなくなっちゃいそうで、怖いんだ。」
「うーん。俺は元貴のこと、好きだけど、
元貴はどう思ってるかは、聞いたことないんだよね……
もっと前に聞いたら良かったけど、
もう面と向かっては、
怖くて聞けないな……。(苦笑)」
「えっ、そういう時……? いやいや、酒の席だからって何聞いてんだよ、はぁっ??
……いや、まぁ、可愛いとかは、言われるよ……。
え……??いやっ、元貴のプライベートでもあるからこれ以上言えないわっ!(笑)
……まぁ、逆らったり、
元貴を突き放すような言葉を言わないようにはしてる……。
いやいや、変な意味じゃないよ(笑)
元貴は寂しがり屋だからさ、
言葉に敏感なんだよ、、。」
「りょうちゃんおはよー。
あっ、クマ?メイクで隠して貰わないと。
あー……昨日、元貴に深夜に呼び出されてさ。
ほら、元貴、ゾーン入ると
全然 解放してくれないから……(苦笑)」
「あぁぁぁ……元貴と、三ヶ月以上、プライベートで会えてないし電話もLINEも仕事の話しかしてない。
…りょうちゃん〜俺から、誘っていいと思う?
今日家行っていい?って。重いかな?
……え?確かに前は家まで押しかけてたわ
俺、元貴に嫌われたくないのかも。
言えないんだよ。
昔みたいにさ」
「うわっ……今日、元貴なんか機嫌悪くない……?
寝れてないのかな……。
マネージャーに一応、元貴の好きなもの
買い出し頼もうか。」
「飲み会? うーん。今日かぁ……。
元貴、今制作期間だから、
いつでも呼ばれたら行けるように、
しておかなきゃなんだよね。
酒は飲めないなぁ。
元貴は即レスする人が好きだから……。」
「え……?いや、元貴は意外と優しいんだよ。
俺が弱ったら、すぐ気づいてくれるし。
気まぐれだけどね。
んー、、いや、、好きとかは、言われたことない。
りょうちゃーん、おれ、元貴にとって、なんだと思う?」
「…………ふっ…………ぅっ…………。
あっ……、、りょうちゃ、これは、、ちがっ……、、
なんでもない、
……いやいや、泣いてない泣いてない、ちょっと咳込んでただけ。
大丈夫だから。」
「りょうちゃん……!よっぱらっちゃったぁっ! いいじゃん、かえるとこ、一緒なんだから!!」
「りょうちゃん〜りょうちゃんが美味しいって言ってた料理、練習しといたよ。
りょうちゃんが好きな味付け覚えた!
元貴には濃いみたい(笑)」
「りょうちゃん……?一度も年上と思ったこと無かったけど、慰めてくれてありがと。
りょうちゃんって彼女いるの?
りょうちゃんに想われる人は幸せ者だね……!」
「……っ。」
幸せ者は元貴でしょ。
こんなに想われて。
若井の人生そのもの元貴じゃんか。
何年も、何年も、傍で見てきた。
元貴は若井を幸せにする気はあるのかな。
いつまで経っても平行線のように見える。
僕だったら、
絶対に泣かせたりしない。
不安にさせたりしない。
若井が元貴しか見てないのは
分かってる。
元貴が……。
ものすごく手強い相手だということも。
その才能も……
もちろん理解してる。
でも
若井を笑顔にするのは、僕でいたい
若井。
若井は、どうしても、元貴がいい・・・?
いつの間にか走るタクシーは自宅の
家の前についていた。
ゆっくり……ゆっくり……。
若井、僕に振り向いてくれたらいいな。
僕は、僕なりに若井を想っていたいな。
そう想いながら、僕はエントランスを抜け、
エレベーターホールへ向かった。
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コメント
32件
いやぁ、二人の恋を応援したくなる話だけど、涼ちゃん視点の時の片思いが辛すぎて、なぜか、泣きそうになってしまう 若井の人生は、元貴さん中心っていう事実があっての片思いっていうのは苦しいほど辛いんだろうな、切ない
まさかの涼ちゃん視点……! 二人をずっと見てきた涼ちゃんだからこその心情の揺れと辛さが読んでいてこちらにもひしひしと伝わってきます……。 今回も素敵なお話をありがとうございます
涼ちゃんの片想い辛いなぁ…、私も失恋ばっかして両思いになんかなったことない立場だからわかるよ… この作品読んでちょっと泣きました…笑 ほんと最高です!!