テラーノベル
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「付き合ってくれません? 」
「だからー、何で? 」
「好きだからって、ずっと言ってる」
「初めて聞いたけど? 」
「はぁ!? ずっと言ってただろ!? 一体何……あれ? 言ってなかった? 」
「……たぶん、聞いてない」
「……たぶんて、何だよ。あー、でもたぶん、言ってない」
「……たぶんて、何だよ」
二宮くんが吹き出した。
「好きだ。えーっと、結構前から」
「何で?」
「理屈じゃないだろ? まあ、強いて言うと、その顔にその身体に……」
あやうく、うさぎを握りそうになった。
「頭の悪そうな返答」
「まあ、全部だ」
「まとめて、きた」
「それから、押しに弱いとこ。お願いすると、嫌って言えないだろ? だから、つけこまれる」
「君みたいなのに……? 」
「僕、優良物件」
「ショールームでしょ」
軽くこちらを睨んで続けた。
「だから、押したらいけるかなって。……思ったんだけどな……」
「うん、でも……無理」
「ちぇ。じゃあ、ちゃんと昇華したら? でないと、またストーカーされるよ」
「彼は、しないよ」
私に未練なんてないだろう。本命がいるのだから。
「“彼に”とは言ってないけど」
「……あ……」
「待ってる」
「二宮くん……」
「待つなって言われても待っちゃうんだから、仕方ないよね」
「……ごめん」
「ストーカーになろうかな」
「目立つよ。その映え」
「よし、付き合おう。決めた」
「ちょ、血迷って……」
「別れて欲しかったら、ケリつけてきて? どっちみち、前向かなきゃだろ? 今月中。それが無理なら……このまま別れない」
ケリ=清水部長とのちゃんとした別れ=二宮くんとの別れ
別れてばっかだな。
って
「いや、意味分かんない。私、彼とはもう会う気ないの」
「気持ちの、ケリ」
混乱してきた。
「ケリつけたら、別れるって意味分かんない。結局、何も残らないというか……二宮くんに……」
「俺も、ケリつけんの。そっから、また考える」
「また?」
「さ、行こうかな。じゃあね、うさちゃん」
外で手を洗うと歩き出した。意味分からない。
「あと、何回か来るんだっけ? 会社」
「ひとまず明日……携帯返す」
「今月いっぱいは、俺の彼女ね」
「いや、だから……」
「何もしない」
「いや、した! もう、したから!」
「あんな、ちゅー? うさぎにすんのとかわらねぇ」
……そうか……っていやいや。
「メッセでいいから。結果。31日に」
そう言って、私の手を取った。指を、絡ませる。
カシャッ
手を写真を撮ってすぐに離す。
「んー、映えるねー。匂うねー」
「いや、それ、匂わせ越えてる」
「実際は、もっと……何もない。そんなもんだよ。SNSなんて」
「ありがとうね、慰めてくれて」
彼の名目は、分かってる。
やり方は……何て言うか……だけど。
「いーえ、ありがとうね、思い出くれて」
背中を向けたまま、そう言った。少し照れた、その背中が夕日に染まって……綺麗だった。
“女 一人旅 イタリア”
ほー……なるほど。
勇気がなくて、ツアーにしちゃおうかな。
出発は平日にしたら、少し安いか。そもそも、GWの終わった5月なんて、だいぶ安い。
いや、そもそも……イタリアに行く意味はなんだ。それすら、忘れかけていた。
無事に携帯も返せて、有給を満喫していた。家も片付いた。残すこところ、あと1回。
そこ、乗り切ったら、逃げきれる。まあ、追いかけてないだろうけど。
二宮くんのお陰で、海藻から稚魚へ。この稚魚が出世魚ならいいな……海藻とじゃこ(稚魚)のサラダを食べながら、そう思った。ああ、妙に海藻が食べたくなったのは、この前から海藻、海藻思ってたからか。
意外に元気だな、私。自称彼氏の二宮くんが、たまーにメッセージをくれるくらい。
時間はあった。それはもうたっぷりと。
タリア5日間。ツアー。うん、申し込もう。そう思った時だった。
……内定先からの電話。
『パスポート持ってる? 』
「あります」
『視察で、イタリア。1週間。6月の半ばだけど、行ける? 』
「……行きます!!」
『宜しく』
説明、雑だな、所長。いや、イタリア!
何なのイタリア!!危うく申し込みかけたツアーの画面を消した。
よし!思い立って、家を出た。何か私、アガってきた気がする。
本屋で“地球の歩き方”を購入し、来月のイタリアの気候を見て、イタリア用、それに新しい職場用の服を買おうと店へ。
何かとパンツの方が動き易いか。うーん……派手な方がいいかな? イタリアだし。全くの固定概念だけど。両手に持って悩む。
「……右じゃない? 」
「……そうかな?」
既視感半端ないやり取りに……そーっと振り向く。そこには……目も見張るほどの……美しいカップル。
「湊ぉ? 何、してんの?」
ヤバい。
横でにっこり笑ってる麗佳さんはともかく……
「ちょっと、顔。かせ」
吉良くんがついて来いとばかりに顎をしゃくった。
西原衣都
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コメント
1件
うわ、二宮くんの“待つなって言われても待っちゃう”とか、もうずるすぎるでしょ…!あの写真に“匂わせ”って言い返す感じも好き。でもそれ以上に、最後の吉良くん登場が怖すぎて鳥肌立ったよ。イタリア行きでテンション上がってたのに、まさかそこで会うとは思わなかった…。続きが気になって仕方ない!