「玲奈ちゃん…俺、もう、イきそう…」
「ちょっ…!?待って!」
(また、こんな感じなの?)
「え?」
「私がイってからじゃないとダメ!」
(いつも、どうして?)
「でも、俺…」
「我慢できないの?」
「これ以上、無理…かも」
「じゃあ、あとは家に帰って自分でしてよ」
「そんな…」
大学の女友達から話を聞いても──
読んでいるTL系の漫画でも小説でも──
みんなが気持ちよさそうにイきまくっている。
(なのに、どうして私だけ…)
私に向けられる切なそうな視線。
「ちゃんとイかせてくれない拓海が悪いんだよ!」
*****
玲奈(れいな)、20歳。
私の中でのセックスとは──
「イく、イくっ、イっちゃう!」と本能のままに叫ぶもの。
好奇心にまかせて読み漁ったエッチな漫画や小説から、そう学んだ。
だけど…
高校時代に付き合った同級生の彼氏と初エッチを済ませて、
その後で何回セックスしても──
私はイったことがない。
大学生になっても未だその瞬間を迎えることができない苛立ちを、
現在付き合っている年下彼氏で18歳の拓海(たくみ)にぶつけている。
*****
「なんで私がイくまで我慢できないの?」
「ごめん…気持ちよくて」
申し訳なさそうな顔をする拓海。
(気持ちいいと言われて悪い気はしないけど…)
「だったら、私のことももっと気持ちよくしてよ!」
拓海としていて、気持ちよくないわけじゃない。
ただ、どうしても…
その先にあるはずの…
まだ知らない快感を味わいたい。
拓海も私と付き合う前に初エッチは済ませていた。
だからといって、経験豊富なわけじゃない。
年下だから仕方ないのか…。
それとも、拓海自身に女を悦ばせる才能がないのか。
「ねぇ、何かエッチな動画とかで勉強してきてよ」
「え、勉強って…」
「一緒にイきたいでしょ?」
まだ硬いままの拓海のモノを指差す。
恥ずかしそうに俯く拓海。
「…わかった」
*****
数日後。
アダルト動画を観て勉強してきたという拓海と体を重ねる。
最初はいつもよりも気持ちいいと思っていたのだが、
徐々に激しく乱暴になる拓海の愛撫。
指を使って敏感な部分を強く擦ったと思ったら、
その後で、中に入れて激しく動かす。
「いっ…たっ……痛っ!」
「え!?」
「ちょっと!そんなに強く擦られたら痛いし」
「ごめん…」
「乱暴に早く動かされたら怖いでしょ!」
拓海のやり方に、自分が大切にされていないような気持ちになった。
「そ、そう…なの?」
「どうして前よりもひどくなるわけ?」
「…………」
「勉強してきたんじゃないの?」
「いろいろ観てきたけど…」
「けど、なに?」
「本当に、こんなことしていいのかな?って思ったんだよね」
*****
「それ、なんのプレイ?射精管理?」
高校時代からの親友、彩花(あやか)が笑う。
「玲奈ってSなの?」
大学は別々になったが、今でもちょくちょく会っている。
彩花は高校の時から奔放で経験豊富。
自分でもエッチが好きだと公言するくらい。
そんな彩花には年上で蓮(れん)さんという27歳の彼氏がいる。
蓮さんは大手広告会社に勤める、超エリート。
『出会いはナンパ』
彩花からはそう聞いているが、本当のところはわからない。
時々、彩花はマッチングアプリで遊び相手を探す。
彩花曰く、ただ欲望を解消するだけなら、
それが一番効率がいい──らしい。
2人はそこで出会ったのではないか、と私は思っている。
私には絶対無理な出会い方。
だからこそ、そんな彩花の奔放さが、まぶしく見える時がある。
本能のままに生きている感じ。
私も本当はそんな生き方がしたい…。
でも、できない。
根が真面目なのか、何をするにしても普通。
振り切ったことをする勇気もない。
できそうもないことは、すぐに諦める。
なのに、どうして私はイくことに執着しているのか。
自分でも不思議…。
(どうしても、これだけは諦めたくない…)
(女としての悦びくらい、ちゃんと味わいたい!)
蓮さんはセックスが上手らしい。
するたびにイきまくっていると彩花に聞いたことがある。
彩花には私のセックスの悩みが理解できないようで、
ただ面白い話を聞いて喜んでいるような感じだった。
(私も彩花のようにイってみたい!)
(まだ知らないその瞬間を味わいたい!)
何度、そう思ったことか。
「Sとか、そういうんじゃないけど…」
私は正直に話す。
「なんか…拓海だけイくのが許せなくって」
「拓海くん、かわいそう!」
「そんなこと言っても、私だってイきたいんだよ」
「そのうち、浮気されちゃうかもね」
「え?」
「だって、寸止めなんて最悪でしょ」
「最悪って…」
彩花の言い方に、腹が立つ。
(こっちだって嫌な気分になってるんだから!)
「拓海くん、若いんだし。そんなのずっと耐えらんないでしょ」
「その若さがいけないのかも」
「どういうこと?」
「だって、彩花は年上の彼氏だし、蓮さんって経験豊富なんでしょ?」
「あー、まぁ…私も蓮に負けないくらい経験してるしね」
「やっぱり、年上っていいよね。羨ましいよ」
「えー!私からしてみれば、年下彼氏の方が羨ましいよ」
「蓮さんにリードしてもらえる彩花の方がいいに決まってるよ」
(実際、蓮さんとイきまくってるくせに!)
心の中で毒づく自分の言葉に、たまらなく惨めな気持ちになる。
(拓海の方がいいなんて嘘ばっかり!)
自分で相談しておいて、彩花の話を聞いて腹を立てるなんて。
「じゃあ、交換してみる?」
彩花がいたずらっ子のように、私に微笑む。
「え?交換って…どういうこと?」
「そのままの意味だよ」
「ちょっと、わかんないんだけど」
「拓海くんと蓮を交換するってこと」
「は?」
「玲奈が蓮とシて、私が拓海くんとするってことだよ」
「それって…」
「彼氏を交換してセックスするってこと」
コメント
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じゃあ私達が書いたものは消すのになんで運営はこれを許すのかよく分からなくなってきた…
運営さんがいいんなら俺らもいいんじゃないん?大炎上じゃんw