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夜の11時を過ぎていた。部屋の照明は少し落として、テレビの音だけが小さく流れている。
 ソファに並んで座っている2人。
2人ともパジャマ姿で、仕事の疲れが抜けきらないまま、
ぼんやりと一緒に映画を眺めていた。
 仁人は腕を組んで、テレビ画面に視線を向けたまま。
勇斗はその隣で、彼の横顔をじっと見つめていた。
 (最近、俺ばっか好き好き言ってる気がする!バカみたいじゃん、仁人に言わせて〜!)
 そんな考えが頭をよぎる。
仁人は普段からツンデレで、甘い言葉なんて滅多に言わない。
それが彼の魅力でもあるけど、
たまに、どうしようもなく不安になる夜がある。
 勇斗は、リモコンを置いて、
そっと仁人の肩に体を寄せた。
 「ねえ、仁人」
 「ん?」
 「……俺のこと、好き?」
 「は?」
 仁人が一瞬でこちらを振り向く。
その顔には“今なんて?”って書いてあるようだった。
 「だから、好き?」
 「なに急に」
 「いいじゃん。聞いちゃだめ?」
 勇斗がすこし拗ねたように言うと、
仁人は視線を逸らして、少し息をつく。
 「……そんなの、言わなくてもわかるだろ」
 「わかんないもん」
 勇斗の声が少しだけ低くなる。
冗談っぽく聞こえたはずなのに、仁人は一瞬だけ目を見開いた。
 「最近、仁人全然好きって言ってくれないじゃん。 俺ばっか言ってる気がして馬鹿みたい」
 勇斗が言葉を濁すと、仁人の表情が少しだけやわらぐ。
 「……はぁ、、お前、めんどくさい彼女みたいなこと言うなよ」
 「うるさい。いいから言って?」
 「……」
 「ほーらー!!早く言えよ好きって!」
 仁人は眉を下げて、少し困ったように笑った。
「あーもーまじ黙れ、 言わないし」
 「言ってくれなきゃ寝ない」
 「子どもかよ……」
 「言うまで寝ない。てか寝かせませーん」
 勇斗がまっすぐに見つめる。
いつもはふざけてばかりなのに、今は少し真剣な目。
その瞳を見て、仁人の胸がすこしだけ締めつけられた。
 「しつこー、こいつ」
 「しつこいって言われても言ってもらうまでやめねえし」
 「はぁ……」
仁人は諦めたように息をついて、視線を下に落とした。勇斗の方なんて一切見ていない。仁人なりの照れ隠しだ。
 「……好きだよ」
 勇斗がピクリと反応する。
 「え、今なんて?」
 「聞こえてたくせに」
 「もう一回言って」
 「やだ、もう言った」
 「大好きも言って」
 「……お前ほんっとにうるさいな」
 そう言いながら、仁人は少しだけ笑って、
少しだけ勇斗の方に視線を向けた。
 「……大好き」