テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
32
瑞希 流星♟也中
1,217
#腐×
さとう
44
春鮫 #リク募集中
157
隣人ループ / 蘭菊
夕日の迫る放課後のことだった。筆箱を忘れて教室に戻ると、あの転校生と出会した。⋯⋯特に言葉を交わすこともなく、そのまま別れたが。
そうして帰宅するなり、机の上の母の書き置きに目を留めた。
『帰るのは明後日になる』なんて文を見るのはこれで何度目だろうか。
私は、あの転校生のことや帰らぬ母のことをぼんやり考えながら布団に潜った。
窓の外から蝉時雨が響く中、気付けば私は眠りに落ちた。
目が覚めた。
じっとりした汗が首筋を伝った気がした。徐に立ち上がり、布団を押し入れに仕舞う。
ふいに時計を見やった。どうやら、今はまだ五時らしい。登校時間までまだ余裕がある。そんなこともあり、パジャマがあまりにも肌に張り付くので朝食をとる前にシャワーだけ浴びることにした。
お湯を浴びながらふと思い出すのは、昨日、あの転校生に挨拶しなかったこと。礼儀知らずだとか思われただろうか。
いや、事の発端は初対面で彼が無言だったことだ。そうだ、そうなのだ。
「⋯⋯はあ」
何かと気まずいな。
あっという間に一時間が経ち、六時半前後。風呂も朝食も済ませ、シャツに腕を通した。
姿見の前で襟を整えながら欠伸をする。
⋯⋯それにしても、気まずいな。
もちろん、印象は悪いだろう。だが、それはお互い様だ。お互いに挨拶をしなかった。おあいこだ。
鞄を持って玄関の扉を開ける。
戸を開けるなり、目が合った。
「あ」
小さく、声が重なった。
あの転校生が、私の隣の部屋──「202号室」から出てきた。
「おはようございます」
咄嗟に出た言葉は、朝の挨拶だった。
「⋯⋯ああ、おはよう」
彼の金髪が風で揺れた。
あの転校生は私とアパートが一緒な上に、隣の部屋だった。
「隣なんですね、初めて知りました」
「まあ、そうやの」
いざ話すと、空気は案外重くなかった。彼はそれほど気に留めていないのかもしれない。
しかし、それはそれで自分だけが必死に思い悩んでいたようで恥ずかしくなる。
こうなると、必然的に会って話す回数が増える。
登校する道が同じなら、下校する道も同じだ。
ああして毎日顔を合わせるのかと思うと、正直憂鬱だった。
ただ歩く。学校まで、二人で。
「⋯⋯気まずいの」
彼は、自分が思ったことをその場で言ってしまうタイプだった。
「あー⋯⋯はは。そうですね。話題がないっていうか」
彼はそれ以上何も言わなかった。淡々と歩いている。
そんな中、私は左側の景色を見ていた。見慣れた景色を見たかったわけではない。単純に彼と目を合わせたくなかったのだ。
不自然でないくらいに、僅かに左へと顔を背け続けた。
気付けば学校に着いていた。他の人が来るのにはまだ早い時間。
下駄箱で靴を履き替えた。
教室へと向かう二つの足音が煩わしく思えた。
特に話すことがあるわけでもないのに、互いに並んで歩いていた。どちらが先に行くわけでもなく、どちらが歩くペースを落とすわけでもなく。
スライド式の扉を開く。教室には、やはり誰も居なかった。
そして、彼とは隣の席である。
授業の用意をしつつ、この空気に耐えかねた私は口を開いた。
「今日の一限目の授業、なんでしたっけ」
一限目は国語。わかっている。それでも、会話が続かないよりかは知らないふりをしたほうが多少は楽だと感じた。
「あー⋯⋯国語でねえか?」
「そうですか。ありがとうございます」
それっきりまた会話は途絶えた。
一対一、苦手なんだよな。
いつの間にか授業は終わり、チャイムが校舎に響いた。教室は生徒がまばらになり、ついには私一人となった。
帰る用意が終わるなり、私も教室を後にした。茜色に染まった廊下を進む。
今日は忘れ物もなく、そのまま昇降口を出た。
──そこからが問題だった。校門へ行くには中庭を通らなければいけない。しかし、中庭には人が居た。
「あ、あの。好きです。こんな気持ちは初めてで⋯⋯えっと、その。付き合ってもらえると嬉しいです」
咄嗟に校舎の陰に隠れる。
その声の主は、同じクラスの小原さんだった。少し俯いている。
そして、その言葉を向けた相手は蘭さんだった。
彼が転校してきてまだ二日目だろうに。小原さんは、惚れた相手にすぐ告白するところがある。あたかも「初恋です」なんて顔をしているが、今回が初めてなわけではない。
一方、彼の表情は見えなかった。こちら側に背を向けている。
見聞きしてはいけない。それは分かっている。それを百も承知で、ここから離れられないのだ。
少しだけ、身を乗り出した。
乗り出してしまった。
パキッ。
こんなアニメみたいなことがあってたまるか。
「おえ、誰ざ」
木の枝が折れる音に、彼は振り返った。小原さんも蘭さんからこちらに目線をずらした。
ああ、やらかした。あろうことか木の枝を踏んでしまった。
私は走った。昇降口へと。
そこはまだ閉まっていなかった。不幸中の幸いと言えよう。
あの場で上手く言い訳できるほどの話術がないことは、朝の登校時に身をもって知った。
とりあえず、一階の男子トイレへと向かった。
さて、ここからどうしようか。
私はトイレの個室の中で、ため息をついた。「そういえば、蘭さんの返事を聞き損ねたな」なんて、つまらぬことを考えながら。
コメント
5件
なんかコメント送ったのに送られてない!?!?!?萎えた くくくくくくくくく、何かが始まる音がした〜〜♩♩♩♩ 隣人だった!席も住んでるところも タイトル回収しててあついベリーホット 小林えぐい、小林印象的すぎるやばい 小林好きだわ、小林推しになりそう 小林、小林、やばい頭が小林になってきた 気まずい感じが画面を超えて伝わってくるのすごい頭ではいつも以上に1人で会話してるのに口には出せない 小林、