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[木林side]
初めて異変に気づいたのは1週間ほど前だった。
夕希子さんの事件が解決して、やっとあの金魚との縁が切れた。中堂さんも安定した生活が遅れるようになってきていた。服のセンスは相変わらずで、よれたシャツ以外の服を着ている姿は見ていないが。
そんなある日、彼が空中をぼうっと見つめていた。話しかけても、目の前で手を振ってもうわの空で、様子がおかしいのは誰が見ても明らかだった。
仕事を終え、彼のこともあるしUDIラボに顔を出して帰ろうと思った矢先、衝撃的なものが映った。
宍戸だ 。
意味がわからない。あいつは高瀬と共に逮捕されたのだろう。何が起こっている。
「 っ ゛ぐ 、んん゛ぅ ~ っ 」
中堂さんが 、宍戸に 、あの 、ボールを口に…
「っ !!!」
急いで口を塞ぐ 。本当に 、何が起こっているのか全く理解できない。
捕まったはずのあいつがなぜ。
溶けて跡形もなくなったあのボールがなぜ。
何より、
あの“中堂さん”がなぜ…!!!
考えている暇もなく 、呻き声が消えた 。
「く 、ははっ あははははっ」
「今日もお疲れさん」プス
「ぅ゛、 …」
何をしたんだ… !? 今すぐにでも飛び出して宍戸を問い詰めたい気持ちを抑え、深呼吸する。今あいつを刺激して何かしでかしたらたまったもんじゃない。
鼻歌を歌いながら去っていく宍戸を睨んでいると、金属に何か落ちる音がした。
中堂さんが泣いている。
先ほど打っていたのは麻酔かなにかだろうか。生気のない彼の目から涙だけが落ちてくる。
─
しばらくして中堂さんが起き上がった。
「… また 」
彼はそういって眉間に指を押し付けた。ぐり 、と強く。考え事をしてるようだ 。ふと顔を上げた。
「誰だ」
「!」
まさかバレているとは思ってなかった。野生の勘 、というやつだろうか。
「木林です。隠れて見ていてすみませんでした 。」
ふん 、と鼻を鳴らしてこちらを睨んだ後、いつからだ 。と聞いてくる。
「言いづらいのですが、あの…宍戸 が」
「あぁ 、そうか」
これ以上何も言うな 、とでも言いたげに被せてきた。
「こんな時間に何の用だ」
「いえ、特に何も…」
「何も無いわけないだろ」
「…すみません 。つけてきたんです 。」
「……じゃ 、なんであいつを追わなかった」
「貴方の方がよっぽど心配でしたので 。」
「そうか 、出てけ」
「無理です 。」
面倒くせぇ、と呟いたと思ったら解剖台からするりと降りて出口に向かっていった。
「あ 、ちょっ 待ってください」
手首を掴んで止めようとすると 、彼は少し怯むような仕草をした。すぐに表情を戻そうとして中途半端な顔になった彼を見て、本当に不器用だなぁ 、と思う。
こういうことにおいてはマルチタスクのできない優秀な猫がフリーズしているうちに、ひょいと持ち上げてソファに座らせる。途中で威嚇されたが、先ほど宍戸が打ち込んだ何かのおかげでそれほど強く抵抗できないようだった。