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 空回り –side:Lawlu–
–side:Luffy–


「おい、トラ男!」


甲板の向こうで立ち止まった背中に向かって、俺は叫ぶ。


「また来たのかよ、麦わら屋」


呆れたように振り返るその目に、ちょっとだけ喜びが混ざってるのを、俺は知ってる。

前まではわからなかったけど、今は……ちゃんと、わかる。


「だって会いてぇし!」


そう言ったら、トラ男は少しだけ目を見開いた。


「……お前な」


その目が困ったように揺れてるのも、今の俺はちゃんと気づける。

きっと前までの俺なら「?」って首をかしげてた。でも──もう違う。


「それに言っただろ?俺オメェーのこと好きなんだって。」


自然と出たその言葉は、もしかしたら軽そうに聞こえるかもしれない。

でも俺の中では、ちゃんと“重い”ってわかってる。


「お前の好きと、俺の好きは違ぇよ」


すぐに返ってきた言葉。またその答えだ。

やっぱり、トラ男は素直じゃねぇ。


「それでも、俺は好きなんだってば!」


まっすぐ見つめたら、トラ男が目を逸らした。


「俺はな……そんなふうに、お前を見たことねぇよ」


少しズキッと心が鳴った。でも、、


「でも俺はそうなっちまったんだよ。」


「……っ、麦わら屋、お前はいつもそうやって──」


トラ男が俺の事嫌いじゃない事くらいわかる。

言いかけた言葉を、トラ男は飲み込んだ。


たぶん、色んなことが怖いんだと思う。

俺と一緒にいることとか。敵だったこととか。仲間じゃないこととか。

そういうの、ちゃんと分かってるよ。


でも。


「俺は、誰と戦うことになってもいい。トラ男が、俺を嫌いになってもいい」


一歩近づいた。


「でもこの思いは本物で、俺はお前に恋してる!この事実だけは絶対ぇ曲げたくねぇ!!」


そのまま俺は、トラ男の襟を掴んでぐっと引き寄せた。

唇が触れる、ほんの一瞬前──


「……すまねぇ麦わら屋」


トラ男がぽつりと呟いた。その声を理解出来たのは唇が触れている時だった。

俺は嬉しくて、恥ずかしくて、熱くて何も考えられなくなっていた。

それでも、俺はもう止まってやらない。


謝るくらいなら認めろ!と思った。

唇が離れた瞬間もう一度言う。


「好きだ!!トラ男!お前が、誰を見てたって。俺は、お前を見てる!」


それが俺の全部だった。

逃げない。誤魔化さない。ちゃんと伝える。それが俺の“好き”だから。






 –side:Law–


「好きだ!!トラ男!お前が、誰を見てたって。俺は、お前を見てる!」


あのバカはそう言った。


こっちは気持ちの整理で頭がどうにかなりそうだってのに──お構いなしに真っ直ぐぶつかってくる。

まるで、俺の理性なんか最初からなかったみたいに。


“好き”──その言葉に、どれだけ意味があるか。

こいつは知らない。知る必要もなかった。

でも俺は、知ってる。知りすぎるほどに。


(お前の好きと、俺の好きは違ぇんだよ)


何度も心の中で繰り返す。

それは自分自身への言い聞かせでもあって。

でももう──それすら、効かなくなってきてる。


「……っ、バカが」


目の前にいる“麦わらのルフィ”は、敵だった。

最初は利用するつもりだった。

でも気づけば、肩を並べて戦って、

気づけば──ずっと目で追っていた。


(シャボンディーから、気づいてたくせに。

ドレスローザではもう確信してたのに。)


無邪気で、自由で、嵐みたいなやつ。

傷ついても立ち上がり、でもふと消えてしまいそうでならないやつ。誰かのために泣けて、誰かの為に命をかけられるやつ。

恋焦がれざるおえない。目が逸らせない。

……だからこそ、怖い。


(あいつの隣に立つ資格が、俺にあるのか?)


あいつは過去に何を背負ってるか。

俺はどれだけの血を流して、どれだけ奪ってきたか。あいつは知らない。


俺の過去も未来も全て救って、他の誰にでも救いの手を伸ばすようなあいつを”俺だけ”のものにしたいなんて。


「……なんか俺がすげぇメンヘラみてぇじゃねーか、クソっ」


胸の奥が焼けるみたいに熱い。

あいつの優しさが、温かすぎて、苦しい。

あいつの笑顔が頭の中でチカチカこびりついて離れない。一緒に居すぎるとこのままさらって俺だけの麦わら屋にしてしまいたくなる。


こんな犯罪者1歩手前みたいな男と付き合って、俺は、あいつは背負いきれんのか?


……それでも。

(欲しい)


──そう思ってしまう。何度考えても、思考を熱が出るほど回転させても。結局は心のどこかであいつの隣にいたいと思ってる自分がいる。


(欲しいもんは、自分で手に入れる。それが海賊だろ…..か。)


自分に言い聞かせるように呟いたその言葉に、ほんの少し、力が宿る。


でも今はまだ、その背中を掴む資格がない。

だから俺は──今日も、何も言わずにその手を振り払う。


だけど。


(“次”は、きっと……)








–side:Lawlu–


「おい麦わらテメェ!!巫山戯んな!それ本気で言ってんのか!!」


「はー??事実じゃん!!どー考えたってギザ男より俺の方が大食いだろ!!だから格下〜!!」


「あ”??もういっぺん言ってみろ誰が格下だよ!!お前に劣るとこなんて1つもねーわ!」


(ギャイギャイギャイギャイ)


「……飽きねーなあいつら、その飯誰が作ると思ってんだよ」

「アウッ!仲良いことはいい事じゃねーか!」

「いや、、あれ仲良いか??」

「ふふふ、鉢合わせる度に競い合ってるわねルフィ」


麦わらの一味の会話が聞こえてくる。

遠巻きから見ていたローの表情が曇る。


——それはいつものことだった。

ルフィは誰にでも笑って、誰にでも触れる。

サンジにもフランキーにも、ウソップにもロビンにも──


「「そんなに言うなら勝負だ!!!」」


(俺以外の奴をここに呼ぶ気かよ…)


目の前話してる麦わら屋とユースタス屋の距離が、ほんの少しだけ近く見えた。麦わら屋と同盟を組んでないやつがあの船に乗る…..

それが、自分でも驚くほど耐えられなかった。


「…….ッ!おい、麦わら屋ァ!!」


つい割って入ってしまった。


「お?なんだートラ男??」


「お前….誰でもかんでもそうやって船に連れ込んで、俺のことが好きなんじゃねーのかよッ!!」


「……と、トラ男???」


沈黙。全員が一瞬固まる。


「はっ……!」


言ってから気づいた。

口が勝手に動いていた。

どうしてそんなことを言ってしまったのか、自分でも分からなかった。


ローは真っ赤になった顔を隠すように、咄嗟に指を鳴らす。


「クソッ、シャンブルズッ!!!」


バシュンッ!!!


「な、なんだったんだあれ??」

「いや….俺も頭が着いて行ってねぇ」


「ふふふ、ルフィ?顔が赤いわよ」

「うわー!!見るな!!」

「なんだこと気持ち悪い空気、、俺自分の船に帰ろ」


* * *


その夜の宴。

ローは現れなかった。


「なんで来ねぇんだよ……!」


ルフィは肉を一口かじったまま、むすっとしていた。

ウソップが「まあ、そりゃーな?」と笑っていたが、ルフィのモヤモヤは晴れない。


「……そんなん知るか!ちょっと俺行ってくる」


「え、ちょ──待てルフィ!?」


そう決めたらルフィは一目散にハートの海賊団の船に乗り込みローの部屋まで駆け出した。


ドカドカドカドカ!!バーンッ!!


「トラ男ッ!!お前ッ!なんで来ねぇんだよ!!」


「おめぇーのせーだろーがァ!!」


「なんでだよッ!!意味わかんねぇよ!!」


「……ったく……お前、少しは空気読めよ、」


「読めねぇし!」


(知ってる…..(クソデカため息))


「てか、何ふつーに密航してんだよ。出てけ」


「嫌だ!トラ男が宴に来るまで絶対ぇここから出ねぇ!!」


「はぁ!?!?」


しばらくの大騒ぎのあと、2人とも疲れた用で部屋の中が少しだけ静かになった。


「ハァハァハァ、トラ男!宴来いよォ、、、」


「行かねぇーって、諦め…….」


ポロッ


その時、ルフィの目から何が落ちる。


「なっんで、来てくれねぇーんだよ、、とらおぉ(グスッ」


((えぇぇぇぇ、、、))


「な、麦わら屋?なんで泣いてんだよ、、ちょっ」


予想外すぎて戸惑うローとひたすら駄々をこねるルフィ


「オレ、わかんねーよぉ、!!なんで避けるんだよォ(グスッ 俺はこんなに好きなのにぃ、!」


「……….ッッ!」



沈黙。


「はぁ、、」


腹を括ったような表情でローはルフィを見つめる。そして、ローが座ってるベットの横に手を置きポンポンと叩いたら


「麦わら屋……こっち来い」


「へ?(グスッグスッ」


「ベッド。いいから座れ」


2人並んで座ると、ローがぎこちない表情で少しだけ俯きながら口を開いた。


「……お前、誰にでもこんなことすんのか?」


「は?」


「易々と人を船に入れたり、男の部屋に入ったり、ベッドにまで座って……」


「えぇー!?お前が座れって言ったんじゃねーか!!」


「そーだけど、お前は相手を信じすぎた。襲われたりしたらどーすんだ」


「そん時は戦うぞ、負けねぇ」


「そういう意味じゃねーよ」


また沈黙。

でも、お互いがお互いの事を意識し甘い空気が漂う。

そしてローが緊張しつつも口を再度開いた。


「お、お前に惚れてる男の部屋にも、普通に入るの、か?」


「、、、」


?????????????????

頭の中が?で埋まる。


ルフィ思考停止、固まる。

ロー、耳まで真っ赤。

ルフィ、脳内処理中──

──そして理解。


「……え?トラ男……え?」


「だ、だからっ!!」


「うわっ……マジ?本当か??……」


「るっせぇな!!言っとくけどお前より前に好きになってんだよこっちは!!なのにお前はベタベタベタベタとッッ!!」


「トラ男!!」


真っ赤になったルフィが、じわじわとローに寄っていく。


じーーーっ


「な、なんだよ。んな見るなよ」


「俺…お前のこと、好きになっちまったんだぞ……?」


「知ってる」


「……」


「……」


(……このあと、どうなんだ?)


そんな空気のまま、ベッドの上、ふたり。

息がかかる距離で、ただ向き合う──


「つ、つまりこれは…..どーなるんだ??トラ男」


「知るかよ、俺だって今状況整理中だ。」


「トラ男はどーしたい??」


「は?そんなん、、付き合ってずっと大切にしたいに決まってるだろ、、(ドッドッドッ)」


「そ、そーかぁー、、(ドキドキ)」


「「、、、」」


「と、とりあえずっ!みんなに報告してこよーか!」


「はっ!?やめろ!!」






お互いの背中を追いかけ続けた空の鬼ごっこはこれにて終了。これからは2人で色んな厄介事から逃げる番。さて、逃げ切れるでしょうか?


きっと大丈夫でしょうね。2人一緒なら。

きっとずっと。幸せになります。


-The End- ▷▷あとがき

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