テラーノベル
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「そんな不安そうにせんでも、大丈夫。俺は直美のこと、何でもわかってるから。やろ?」
彼は段ボールの中身を出す手を止めて、一歩私に近づくと
「直美が早く仕事をしたいって思ってることも知ってるし、亜優の学校の間だけの仕事に限られることもちゃんと考えた。だから、通勤にも一駅だけや。あとで一緒に行こな」
と私の頭を撫で、頬を撫でる。
何でもわかってる……本当に?
付き合っている頃なら、そのまま信じられた言葉。
今は……亜優が生まれてからのハルくんの変化がある今は、不安になる。
翌日、亜優も一緒に電車に乗り、夫に連れられて来たのは
【珈琲大陸】
という、喫茶店だった。
「駅からすぐで、天気の悪い日も通勤が楽やろ?」
「うん、そうやね」
そう答えながらも、カフェというより昔ながらの純喫茶という雰囲気の店には子どもは不似合いだと感じていた。
「今……いいのかな?」
「忙しい時間じゃないからいい。連絡してあるし」
店内が見えない木製のドアを開けた夫に続いて、亜優と私も店に入る。
「先輩」
「おう、いらっしゃい。引っ越し終わったか?」
コーヒーの香りがする店内にはお客様はいないようだ。
迷わず奥へ進んだ夫に続いて奥へ行くと、6席のカウンターがあり、その中から蝶ネクタイをした男性がこちらを見ていた。
「直美、大学の先輩の風間さん。サークルの先輩で、一時期ルームシェアしてた。マスターと呼んで、って皆に言ってる人」
「ママ、ますたぁって、なに?」
「こういうお店をやっている人のこと……えっと、お店のリーダーって言ったらわかる?」
亜優に応えると、亜優はもうきょろきょろとし始めた。
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