テラーノベル
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静かなオフィス。
パソコンのキーを打つ音だけが、規則正しく響く。
「……〇〇、昨日の資料の修正、確認した?」
隣の席から向井康二の声が聞こえる。
柔らかくて少しからかうようなその声に、
思わず胸がざわつく。
今日も、目の前に座っているだけで、
心臓の音が大きくなる。
「うん、もう終わったよ」
「さすがやな。ありがとな」
微笑みながら言う彼の声は、
いつもより少し低くて、耳の奥まで届く。
デスク越しに視線が合うだけで、
手元の作業に集中できなくなる。
私は資料を整理しようと手を伸ばした瞬間、
ペンが机の端から滑り落ちた。
「あっ……!」
「お、落ちたんか?」
振り返ると、康二が素早く手を伸ばして、
私のペンを拾い上げた。
手と手が触れる瞬間、思わず息を止める。
目が合うと、彼は軽く笑って、
「ええねん、取ったるだけや」
とだけ言った。
その後も、二人の間には何気ない沈黙が続く。
でも不思議と、静かなオフィスの空気が甘く感じる。
少し時間が経ち、私は資料をコピーしに立ち上がった。
コピー機の前で操作に手間取っていると、
背後から軽い息遣い。
「手伝おか?」
振り向くと、康二がニコッと笑いながら近づいてきた。
手を添えてコピー機を操作してくれるその距離に、
胸がきゅんと締め付けられる。
「ありがとう……」
「ええねん、隣に座っとるんやから、当たり前やろ」
そう言って、少し肩をすくめる康二。
その自然な仕草が、なんだか胸に刺さる。
午後の光が窓から差し込み、
二人の机の間に影を落とす。
パソコンのモニター越しに、
ささやかな視線のやり取り。
何気ない会話、ちょっとした距離感
それだけで、心が忙しくなる。
「……今日さ、仕事終わったあと、ちょっと話さん?」
突然の言葉に、心臓が跳ねる。
「え……話、って?」
康二はニコッと笑い、目を細める。
「気になること、いろいろあるんや」
デスク越しの距離は、少しだけ近づいた。
けれどそれ以上に、胸の奥のドキドキは、
もっと大きくなった。
コメント
2件
えーーん最高ありがとう😭😭🧡