キレイになったふわふわな毛並みを散々もふりまくってからシロを解放してあげた。
あまりにも気持ち良すぎてちょっとやり過ぎだったかもしれないが、シロも喜んでいたようなので問題はない。
「他にも出来ることはあるのか? 別に魔法じゃなくてもいいんだぞ」
すると、またもやシロは2m先をくるくる回りはじめた。
そして、回るのをやめたシロは俺の方を向いて ワンッ! と吠えた。
んっ、なんだ? どうした。
すると、見る見る間に大きくなっていくシロの体。
やっぱりなぁ。
フェンリルにしては小さいと思っていたんだよなぁ。――巨大化?
いや、逆だよな。 いつもは小さくなっているのだろう。それにしても、
「これがフェンリルなのかぁ。これは凄いよ。かっこいいなぁ」
俺がそのように呟いているとシロがそのまま目の前までやってきた。
かぁ~、でっかいなぁ4mはあるだろう。後ろで振られる大きな尻尾も、また良き。
顔を寄せてきたので、シロの首に抱きついてワシャワシャしてやった。
こっ、これはもふもふで最高。もろにモロですよぉ~。
ふっかふかだぁ。――はははははっ!
シロに聞いてみると段階的に大きさは変えられるみたいだ。
しかし、大きくなったシロもなかなか精悍でかっこいい。
それにもふもふなのだ。 そう、もふもふは正義。
だからダメだ! ダメなんだ。
もふもふには人をダメにする魔力がこもっているのだ。――まさに。
因みに大きくなっても尻尾は一本でしたwww ――深い意味はない。
それで魔法もいろいろと応用が利くみたいだ。
微風を出して髪を乾かしたり、竈に火種をつくってくれたりと重宝している。
その中であっても一番はやっぱりコレ、浄化だな。
用をたした後のお尻掃除に最適! まさにウ○シュレットいらず。
そんなものに浄化を使うと女神さまに怒られそうではあるが、やっぱり快適が一番だよな。
異世界にはトイレットペーパーなんてないだろうから。
とくにやる事もなくなったので、竈近くの岩に腰掛けいろいろと考えをめぐらせていた。
すると、さっきまで丸くなっていたシロが急に立ち上がり竈の周りをウロウロしている。
何だかそわそわした感じだ。ときどき目線を遠くに飛ばしている。
どうやら林の方が気になっている様子だ。
「なんだシロ、林の方に行きたいのか?」
するとシロは俺の目を見てコクコク頷いてくる。――可愛い。
ちゃんと言葉が分かっているんだな。
「そうか、暗くなる前には帰るんだぞ」
そう言うと、また目を見て頷いてきた。
「人が居ても近づいたらダメだぞ。俺が口笛吹いたら戻ってくるんだぞ」
うん、しっかりと聞いているようだな。
「それじゃ、行ってよし!」
俺は言葉と共に林の方を指差した。
ふぅ~ やれやれ、すっ飛んで行ったなぁ。そんなに遊びたかったのかな?
さーて、さっき汲みおいた水を沸かしていきますかね。
ダッフルバッグからフライパンを取り出すと、水筒から水をうつし竈の上にのせた。
そして、再び岩に腰を下ろし空を見上げた。
うん、青空のトーンが落ちてきたな。もうすぐ夕方かな。
あぁ、コーヒーが飲みたいなぁ。こっちの世界にもコーヒーはあるのだろうか?
どのみち町まで出ないと何もできないよなぁ。
………………
それから、しばらくしてシロが野営場に戻ってきた。
フルサイズになったシロが、なにか口に銜えている。
あぁ、なるほどそう来たか。
俺より先に転生していたシロはこうして獲物を狩って暮らしていたんだろう。
それで、何を銜えてるんだ?
トトトトッと林の方からシロが近寄ってくる。
そして、獲ってきた獲物をドサッと俺の前に置くとブンブン尻尾を振っている。
「よくやったなシロ、すごいぞぉ~」
通常のわんこサイズに戻ったシロ。
俺はシロの頭を撫でながら、しばらくのあいだ褒めてやった。
すると満足したのか、シロまた林の中へ突っ込んでいった。
えっと……、このでっかいトカゲはどうするんだよ~。
生前にキャンプはよくしてきた方だが、解体なんてやったことがない。
しかもトカゲだよ。ホントにどうすんの?
取りあえずは血抜きからだろうか。――ラノベによれば。
少々シロを恨めしく思いながらダッフルバッグよりナイフを取りだす。
まぁ見事に首がないな。
鋭い刃物でスッパリ、一気に切らないとこうはならないだろう。
魔法で倒したのかなぁ? ――いや違うだろ。
俺の許可がないと魔法は使わないだろう。さっき約束したばかりだしな。
そうすると爪による一撃かな?
魔力を這わすと刃物のようになるとか、ラノベにも出ていたような気がする。
シロ凄すぎる。さすが聖獣様だな。
などなど、いろいろと考えを巡らせながら作業を進めていく。
首は切れているので切り口を下にして尻尾の先を少し落とせばいけるだろう。
たぶん……だけど。知らないものは仕方がないでしょうよ。
トカゲの尻尾を掴んでズルズルとやってきたのは、シロが風魔法で倒した樹木のある場所だ。
竈の近くにはトカゲを吊るすのに適したものが何もなかったのだ。
それにここにはシロが樹木を切り倒してくれたおかげで、丁度いい枝がたくさんあるのだ。
――まさに怪我の功名!
縛る紐などはないので、複数の枝にトカゲの足を上手く引っ掛ける。
あとは真下に血だまり用の土を掘って尻尾を切る。
すると、たら~りたらりと血が垂れていき血抜きができるという寸法だ。
あとは血が出なくなるまで待ってから内臓を取り除いて穴を埋めれば良しっと。
しかし、周りの木を見わたすと改めてシロの魔法の凄さがわかるな。
人間なら5人10人は一撃で葬れるだろう。――また背中がゾゾッとする。
血抜きされていくトカゲを眺めていると、どこからかシロが戻ってきた。
「おう、シロ楽しかったか?」
そう聞く俺に、シロは嬉しそうに尻尾を振りながら ワンッ! と返事をしてくれた。
「こんなでっかいトカゲどうやって倒したんだ?」
いつものわんこサイズに戻っているシロに聞いてみた。
すると、シロはお手をするかのように右前足を上げ、そのままストッと下げた。
その瞬間1m先にあった20cmほどの木の枝がストンと落ちたのだ。
わぁ――お! これってシロにお手をさせたら手首をなくすヤツが出てくるんじゃないの?
おお――っ、怖すぎる!