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その日もまた、放課後に七海と教室で雑談が始まっていた。
「天野はさ、友達作らないの?」
まるで私に友達が居ないみたいじゃないか。
「まるで私に友達が居ないみたいじゃないか」
思ったことをまるっきり言ってやった。
「え、友達居るの?」
そう言われれば、友達と呼べるほどの人間関係を養った人は数少ないかもしれない。
「ネットに数人居るのと……生徒会のメンバー辺りが友達に該当すると思う」
”友達”という言葉の定義が良く分からないから、この質問に詳しく答えることは出来ない。
どこからどこまでが友達と呼んでいいのか、私に決める権利は無い。
「クラスには一人も居ないの?」
「分からない。二言三言くらい話したことがある人はいるけど、それを友達と呼んでいいのかは……」
友達の定義は、多分人それぞれだ。
自分が友達と思えば友達だし、他人だと思えば他人だ。
この言葉は会社で言う社長や社員のような、自分の立場を示す言葉ではないのだ。
友達という関係性は、相手から示される立場なのだ。
「そもそも、友達の定義って何なのか教えてほしい」
根本的な疑問を投げかけてみた。
七海は少し唸って考える。
「そうだなぁ……何でも言い合えて、色んな感情を分かち合える人、みたいな?」
成る程。まぁベタな答えだろう。
「あ、今、当たり前だろって思ったでしょ?」
七海にそんなことを言われる。大体合っているのが少しばかり悔しい。
「うん」
「そこは否定してほしかったなぁ……」
嘆くように呟かれる。そんなことを言うなら最初から言わなければいいのに。
面倒くさい。これも人間の心理なのだろうか。
自分の口からは回りくどい言葉が出てくるくせ、本当は本心を分かってほしいという、所謂「察しろ」という合図。
まぁ別にどうでもいいが。
「じゃあ、天野にとって友達ってなんなの?」
私はしばし考えて、やっと一つの答えを絞り出した。
「捨て駒」
「すてごま……? え、どういうこと……?」
「七海が言ったように、友達はなんでも言い合える。その時その時の感情を分かち合うことも出来る。でも、反対に上手く利用することだって出来る。協力してもらった手柄を自分のものにできれば、客観的に見た己の経験値が必然と上がる。他人から認めてもらうことだって出来る。まぁ、大抵はwinwinにやっていくのが普通だけど、利用することが出来る点、友達は自分の経験値を上げるために使える捨て駒だってこと。使えなかったら捨てればいいんだし」
「……俺、一瞬納得しそうになったけど、よくよく考えたら言ってること最低だからな」
そうだろうな。私の考えは外道だ。他人にこんな考えを言いふらそうものなら、すぐに非難される身だった。
なんでも一旦受け止めて、その考えを正当化しようとする七海だから言えたことだ。
「まぁでも、俺はもう天野のこと、友達だって思ってるけどな」
「あぁそう。__は?」
一瞬納得しかけて、ふっと我に返る。
「待って、どういうこと。今の話聞いてた?」
こんな外道の考えの私を。友達など捨て駒に過ぎないと思っている私を。
友達だと認めるのか、コイツは?
「うん。だって、俺の友達の定義は満たしてるから」
……嗚呼、そうか。
何でも言い合える。色んな感情を分かち合える。
その定義を満たした私は、彼にとっては友達という関係なのか。
「私なんかが友達で、いいのか?」
「うん。天野の考え方とか、性格。俺は嫌いじゃないよ」