夜。
納戸での出来事のあと、志乃は圭吾の申し出で実家に一泊することになった。
さすがに「影の声」を聞いた直後に一人で帰すのは、圭吾も不安だったのだ。
母・律子はふたり分の布団を出しながら言った。
「昔ね、あの納戸……誰かが泣いてるって、何度か聞いたことがあったの」
志乃は手を止め、圭吾を見る。
「お母さんも、感じてたんですね」
「ええ。でも当時は、ただの思い過ごしだと思ってたわ。
……あの子が、まだ“ふたり”だったなんて、気づかなかった」
夜が更け、母が部屋に戻ると、
ふたりは居間のこたつに足を突っ込んだまま、どちらともなく口を閉じた。
静寂。
けれど、静かすぎる空気に紛れて――
圭吾がぽつりとつぶやく。
「……志乃さんは、怖くないんですか? 俺の中に、別の“誰か”がいること」
志乃は、それに少し微笑んで答えた。
「怖いのは、“その誰か”を、置き去りにすることです」
「……」
「あなたは、ひとりじゃない。その“もうひとり”だって、
誰かに会いたくて、ここに残っていたんでしょう?」
こたつの上。
二人の手がほんの少しだけ近づいた。
触れそうで、触れない。
でも、温度だけは伝わってくる。
志乃は静かに言う。
「わたしね……本当は、もう一度会いたかった。
あのときの“少年”に、ありがとうって伝えたくて」
「……俺じゃ、ダメですか?」
その言葉に、志乃の目が大きく揺れる。
こたつの下で、足の指がぎゅっと縮こまった。
「ダメじゃない。……むしろ、今なら言える」
志乃はゆっくり、圭吾の手の甲に指先を重ねた。
「ありがとう。あなたが、わたしの“記憶”を守ってくれた」
圭吾の鼓動が跳ねる。
影の圭吾の声も、彼の中で、震えながら囁いた。
《……しの、好きだ》
その言葉に、志乃がふと目を見開いた。
圭吾が言ったのではない。
でも、その声が――確かに、胸に届いていた。
ふたりの視線が交わる。
その距離は、ゼロ。
「ねえ、圭吾さん……今、誰かが“好き”って言ったよね」
圭吾は一瞬迷い――そして、答えた。
「うん。……俺も、同じ気持ちだ」
志乃は黙って頷いた。
その夜、ふたりは言葉少なに並んで眠った。
でも、心はまるで、抱きしめ合っているように寄り添っていた。
そして――
志乃の夢の中。
彼女は、ふたたび“鏡の中の少年”と対面していた。
《ぼくは、もうすぐいなくなるかもしれない。
でも、きみに会えてよかった。だいすきだよ》
夢の中で泣くなんて、子ども以来だった。
ごっめんよぉぉぉ!!!!!くっそありきたりになっちゃったぁぁ!!🥺ま、まぁ???許してくれる、、、よね??
あっははぁ(*ノω・*)テヘ