[後編]
《ウェン》
…痛い。痛みで目が覚めた。時間はでも8時だった。
意外とちゃんと眠れたらしい。今日はみんながくるから
両親も家に居る。正直怖いけど学校通り過ごせばいい。
すこし手当をして朝ごはんを食べるために下へと降りていった
「おはようございます」敬語は抜けなくなってしまった癖。
返事は無い。それもいつも通り。自分で朝ごはんを作って
一言も発さず新聞を見る父と同じ空間でご飯を詰める。
常に緊張して力抜ず上手くご飯の味も分からなかった。
「ご馳走様でした」と席を外し「着替えます」と報告をしてから
台所を後にした。
部屋に入ってからはゲーム機とかの準備、部屋の整頓を先にやった。
終わったのは9時くらいでみんなは10時から来る。お父さんにも
伝えてあるから変に緊張する必要はないのだ。それでも幻滅
されてしまうんじゃないかという恐怖が頭を埋めつくした。
10時になってチャイムがなった。急いで階段を駆け下りていき
玄関を開けた。そうすれば父も母も別人のように分かるのだ。
「いらっしゃぁい!」「お邪魔しまぁーす」
青年は一気に明るくなった。両親も貼り付けたかのように ぱっと
表情が変わった。皆でワイワイ話しながら上に上がることになった。
僕だけ呼ばれたから皆に先に行っといてと伝えた。
きっとさっきまでの僕が気持ち悪かったのだろう。何をされるかは
分かりきっていた。なるべく声を出さぬようにして
皆に気づかれぬように。
やば、救急箱2階だ。バレちゃうかな。やだなぁ。怖いよ。
でも、上に行かなきゃ。そしたら ふわっと体が中に浮いた。
腕を引っぱられた感覚がして もうわけが分からなくなってきた。
なんかドンって音がしたかな。痛いななんて軽く思う。
殴られすぎてどこが痛いのかもわかんないや。…あぁ、階段の
ところで殴ったら見られちゃうよ……、もう、やだなぁ…。
《マナ》
遅い。ウェンが遅い。親と話し込んでいるのかなんなのか。
それにしてもあの親違和感があった。たまに見せるウェンへの
冷たい目線。荒っぽい口調。タメ語に対する反応。…何かある。
なんて考えてたら下から凄い音がして皆で見に行けば階段下で
無抵抗なまま殴られるウェンが見えた。その瞳は真っ黒でいつもと
全く違って。「ウェン!」叫んだ。叫ぶしか出来なかった。
ウェンを殴る父親は獣のような目をしてウェンを殺す勢いだ。
母親も特に何もせず見て見ぬふりをしている。こんなの異常や。
リトが降りていき父親を4の地固めで抑え込むとウェンは咳を
こぼした。心配で近寄ろうとすると「余計なことしないでよ」
という冷たい言葉が聞こえた。普段のウェンからは想像もできない
程の冷たい目線、言葉。酷く心臓を突き刺すような言葉は
耳に反響して鳴り止まない。すると無言でウェンは立ち上がり
家から出ていった。
《ウェン》
最悪だ。見られた。痛いのに。走りたくない。走らなきゃ。
…助けて欲しいっ…、もう、むりなんだ…、これ以上は
耐えられない。辛い。マナに、リトに、テツにあんな冷たいこと
言い放って都合がいいかもしれないのに、でもそれでも
死にたいほど辛いっ…!だれかっ…いないの……、?
数分程走って程なくした頃聞きなれたオオカミの声が聞こえた。
「ウェン?」
その言葉を聞いた瞬間、瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
それはぼたぼたと地面を濡らしていきその様子にオオカミは
ぎょっと目を張った。ズタボロで涙を長す友達を見ればそら
ビビるわけでとりあえず家に来いと手を引っ張った。
その間いつものウェンはいなくて静かに涙を流し続ける。
そんなウェンの様子にオオカミは慌てることしか出来なかった。
程なくしてウェンは泣き止んだ。その時にはもう既に目が
パンパンに腫れ、花を真っ赤にして、痛いところをさすっている。
辛そうな表情に戸惑いながらもオオカミ、ロウは話を聞こうとした。
その瞬間に電話がなり、急いで出ればマナからだった。
そっちにウェンはいないかというものであり、ちょうどさっき
見つけたと言えば「了解」とだけ帰ってきて切れた。
話が分からないロウはウェンの前にすわり話を聞き出した。
ウェンが話をしていればマナ達が思いっきり引き戸を開けて
入ってきた。それにウェンはびくっと過剰な反応を見せた。
それすら目に付いてしまい、マナ達はゆっくりと話を聞き出した。
話を聴き終わったマナやテツは泣きながらウェンを撫でた。
よく頑張ったと、ごめんと、それに答えるようにウェンもまた
涙を流し始めた。マナとテツが離れると次はリトとロウからの
お説教タイムが始まった。そこから1時間こっぴどく叱られ
もう二度と大きな隠し事はしないと約束を交わした。
それからウェンの両親は殺人未遂で警察に捕まりウェンは
ロウの家に引き取られた。あの日を境に隠し事をあまりしなく
なったウェンは身体中の傷を隠すことも無くなりその傷を見る度に
ロウは心を痛めている。持ち前の明るさと優しさもあり結局
前向きな彼が戻ってきて嬉しいのと、なんとも言えない気持ちが
溢れた。「ウェン」優しく呼び止めると彼は「ん?」と笑顔で
振り向いた。その笑顔が偽物でないことは分かっているけど
それでも心配が勝ってしまい聞いてしまうことが日課に
なってしまった。「むりしてないか?」「してない」
「痛いところは?」「まだあるけどだいぶ平気」決まった内容
だけど彼の優しさなのかいつも返答を少し変えてくれる。
それがいじらしくて苦しくなる。どうしてウェンの親は
子を愛さないのか。こんなにも素敵な人だと言うのに。
コメント
1件
最高すぎガチありがとう過ぎる