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あんなに具合悪くしていたのに、スキュラは一体どこに行ってしまったのか?
いくら何でも単独行動は取らないだろうし、あの体で遠くに行くのも考えづらい。
「アック様アック様~! 船が船が!!」
「アック、ドワーフ呼んでる」
今まで試したことは無いが、この機会に広域スキャンを試してスキュラに反応を示すかどうかを調べてみるか?
もっともスキャンは敵と魔物に対して有効なスキル。果たしてどう出るか。
「ご主人様~? 怒っているのですか? はぅぅ……お返事を~」
「アック、疲れているのか?」
とにかく試してみるしかないよな。
よし、早速――ん?
広域スキャンを使おうと顔を上げると、目の前に泣き顔のルティが立っていた。
な、何だ?
「うぅっ、アック様あんまりですよぉぉ~……!! どうしてお返事をしてくださらないのですかぁぁ」
「返事?」
シーニャも微妙な顔でおれを見つめているな。まさかおれの知らぬ間にまたルティが何かしたとかなのか。
「アック、シーニャたちの姿が全く見えていないのだ? ウゥニャ……」
「わたしがアック様のお怒りに触れたぁぁぁ……」
考え事をしている間にずっと呼ばれていたっぽいな。これはまずい。
「違う、違うぞ! 怒ってないからな? 泣き止んでくれ、ルティ。シーニャもごめんな」
スキュラのことで周りを全く気にもしていなかったが、これは反省しなければ。
「と、ところで、おれを呼んでいたって?」
「はい~。さっき一隻出港して行きましたけど、お乗りにならないのかなぁと」
「船? 出港……し、しまった!」
おれは急いで広域スキャンを発動した。
(くそっ、間に合うか!?)
【スキュラ・ミルシェ 水棲怪物 Lv.???】
【リエンス・クラーセン 雇われ騎士 Lv.35】
彼女の名前が見える。スキャンスキルは敵か魔物だけを探すだけだとばかり思っていたがそうではないようだな。何より気になるのは、スキュラ以外にも見えた名前だ。本来のスキュラの実力であれば護衛騎士を雇う必要は無いはず。
「オホン、イスティさま! また小娘たちが泣き出しますの。そろそろ戻って来て~……」
「うん? あっ……」
フィーサにも気を遣わせてしまうとは。
「アック、難しい顔。大丈夫か?」
「アック様、ふぎゅぅぅ~……」
「今はあれだ。スキルを使っていたからであって、ルティに何の問題も無いんだぞ? それとおれが時々難しい顔をした時はスキルを使っている時だ。だから泣くほど気にしなくても……」
「そ、それならよかったですっ!」
「ウニャ?」
ほんの少し意識をどこかに置くだけで泣かれたり心配させないようにスキルを使いこなすしかなさそうだな。
「……さっきの船にスキュラが乗っていたことが分かったぞ!」
「そ、それならわたしたちも行かないと!」
「何かキナ臭いですの。イスティさま。あのスキュラをずっとお連れしていいとお思いですの?」
「どういう意味で?」
フィーサがこんなことを言うなんて。普段あまり話をしない彼女だが何か気になるのだろうか。
「わらわは、あのスキュラがこのままずっとイスティさまに従うとは思わないなの。わらわとドワーフ小娘、虎娘はイスティさまが直接仲間とした存在。でも、スキュラだけはそうじゃないなの」
魔石ガチャとテイムされた彼女たちと違い、スキュラだけはそうじゃない。彼女は宝珠によってついて来ただけだ。だがいい所で助けてくれてもいるし取引交渉もしてくれている。
スキュラ以外のこの子らはガチャで呼び出したこともあって、最初からおれを主人と認めている。そういう意味で明らかに異なるわけだが。
「フィーサが言ってることも理解しているけど、やはり彼女に直接聞かないと分からないからね。まずは神殿に行くよ。それでいいかな?」
「わらわはマスターの剣! 逆らうなんてあり得ないなの!」
「……それじゃあ、次の船でラクルに戻るよ!」
スキュラは魔石で得られた彼女たちと遜色ない働きをしていた。彼女の元に行けば何か分かるはずだ。
「あれっ? 転送で飛ばないんですか?」
「シーニャは初めてだろうから、船にしようかなとね」
「シーニャ、乗る! 海の上!」
何より転送魔法でしっかりラクルに行けるかも不明だ。彼女が船に乗って行ったことにも何か意味があるような、そんな気もしている。
「でもそれだと、先に乗ったスキュラさんを追い越せないのでは?」
「急がなくても行き先が同じですの。ドワーフ小娘は少しは頭を使え! ですの」
「むむぅぅ!! いい加減、わたしのことはルティって呼んでくださいよ~!」
「嫌だもん」
まずはラクルだ。そこからほど近い神殿に行けばすぐにスキュラと再会出来るはずだ。
「アック、アック! 泳いだら駄目なのだ?」
「シーニャは泳げるのかい?」
「ウニャ……分からないのだ。大きな水たまりにも入ったことが無いのだ」
「それならシーニャはおれの傍を離れちゃ駄目だぞ?」
「そうするのだ! アック、シーニャのあるじ! ウニャ!」