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レザンスから乗船したおれたちは、何の問題も無くラクルに到着した。シーニャは船に初めて乗ったこともあってか、酔ってしまったみたいだ。


「ウウニャ~……目が回るのだ、体が揺れるのだ……」


シーニャにとって船は未知の乗り物だ。


おそらく今まで乗ったことも無いだろうし、無理も無いことだな。とにかく今は休ませた方がよさそうだ。


それに引き換え、


「またしてもアック様の町に来られるなんて、凄く嬉しいですっ!!」

「これからだって来ようと思えば来られるぞ」


ルティだけは変わらず元気過ぎる。


「い~えっ! そんなことは無いはずですよ! アック様にとっていい思い出が無いのであれば、ここは自然と避けると思うんです」


倉庫の町に思い出も何も無いが、強いて言えば勇者たちのせいでクビにされて荷物持ちになったくらい。


「……全く、これだから小娘は足りないですの!」

「何がですか~?」

「イスティさまはそんな器量の小さすぎる御方ではないですの! たとえここでちっぽけな出来事に遭遇していてもここは小さな港町。決してイスティさまの思い出の地ではないなの! 少しは学んで欲しいなの!!」

「うぅぅむむむむ……」


思えばルティとフィーサは、仲が悪い状態で出会っているんだな。ともかくシーニャの様子を見てやらなければ。


ん?


あれは――



「キミ、大丈夫かい? 参ったな、女の子ひとりしか見えないな……」

「……ウゥゥ」


全身硬そうな装備ではなく、地味色のマントだけを身に着けた男の姿がある。しきりにシーニャに声をかけているようで、辺りを気にしているようだ。


ルティたちの口喧嘩は放っておくとして、おれはシーニャのところに行くしかないな。


「誰かは知らないが、その子はおれの連れだ」

「――! 良かった、仲間がいたみたいだね」


一見すると騎士のようにも見える。挙動不審でどこか抜けている男に思えるが、そもそも何故ここにいるのか。


「……何故こんな場所に? 何か探し物でもあるのか?」

「す、すまない! 実は人を探しているんだ。ギルドで依頼をと思っていたけど、この町のギルドは人助けをしないって言うし……途方に暮れていて。だから船が着くたびに冒険者に声を――」

「なるほど、人探しか。確かにラクルのギルドは受けないだろうな。それで成果は?」

「まだ見つからないんだ。いや、こことレザンスだけでは見つからないかもしれない。新しい航路を開設させたいけど、僕だけの力では……」


この男の言う通り、ラクルで冒険者をいくら探しても無駄だ。それこそあのSランクパーティーが来たのもレアなケースだった。しかし新しい航路については一か所だけ申請していると聞いたことがある。だが王族が支配する港だということで実現出来ていない。


「見たところ騎士のようだけど、あんたの連れは?」

「騎士……そう、僕は騎士なんだ。だけど見習い騎士に過ぎない。見た目だけでもと思ってビロードを織り交ぜたマントを身に着けているだけの騎士なんだ……」


もっとも騎士にしてはやせ細った体つきだけど。


黒っぽいマントにしてはやたらに光っていると思っていたが、そういうわけか。マント以外の装備に関しても安っぽいクロークだが。


「えっと連れは――」


金色の髪こそ人目を惹くが、だからといって強そうに見えるわけでもない。


「連れがいるならその人と動くべきでは?」

「……いないんだ。いや、正確にはいたんだけど気付いたらいなくなっていて……」

「それは女性?」

「そ、そうなんだ! とにかく綺麗な人でそばにいて護衛をしていたはずなのに、気付けば自分だけになっていて」


レザンスでスキュラを見失ったルティに似たケースか。この騎士もルティも幻惑魔法か何かで惑わされた可能性があるな。彼が護衛をしていたということは女性は貴族だっただろうし、ここは丁寧に接しておこう。


「なるほど、それは大変でしたね」

「キ、キミ! もしかして手練れの冒険者では? 僕はリエンス・クラーセンと言います。よ、良かったら僕から依頼を受けてくれないかな?」

「おれがですか? ちなみにどういう依頼を……」

「もちろん、王女の捜索だよ! それから僕の護衛を!!」

「――はい?」


貴族ではなく王女の護衛だったわけか。それにしても、リエンス・クラーセン――スキャンで見た名前そのものだ。スキュラの近くにいたことでついでに見えていたが、雇われ騎士の意味ってのはそういうことだった。


(それにしてはレベルも弱いし、マントだけ立派な見習い騎士が護衛とはな……)


「そこにいる獣人の子はキミの連れだと言ったよね?」

「……えぇ、まぁ」

「獣人をテイムしているってことはキミはテイマーで強いはず!」


シーニャをテイムというのは何か違う。決めつけられても困る話だ。


「落ち着いて話を整理しませんか?」

「す、すまない。僕がキミに――」

「おれはアック・イスティ。ただの冒険者ですよ」

「キミに依頼したいのは、シーフェル王女の行方とそこに同行する僕の護衛を頼みたい!」


受けるとは言って無いんだが。


それにしてもシーフェル王女か。


どこかで聞いたことがある名だ。彼と一緒にいたのがスキュラだとすれば、王女と見間違っていても不思議はないがまさかだよな。彼女は怪物ではあるけど人間から見れば美女の部類に入るし無くはない。


「リエンスさん。あなたを護衛するのはちょっと難しいな。おれたちはこれから海底神殿に向かうんですよ。神殿にいる魔物のレベルはそれなりに高い。何より、剣も持たないあなたでは……」

「それでも僕は、はぐれた王女を探して王国に連れ戻したいんだ。お願いします! 冒険者アック」


護衛はともかく、依頼されたら受けるしか無さそうだな。

Sランクパーティーから追放されたけど、ガチャ【レア確定】スキルが覚醒したので 、好き勝手に生きます!

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