みく「瀬戸くん、顔赤いけど大丈夫?」
せと「っ?!いやっ、大丈夫大丈夫!」
….瀬戸さん、ほんとに美紅のこと好きなんだなぁ。
美紅結構天然人たらし的なとこあるからなぁ、モテないはモテないでんなわけないだろって思うけど。ま、今んとこ美紅の一番ははてなだし。
ぎゅーっと美紅を抱きしめれば、どうしたの?と笑いながら抱き締め返してくれた。瀬戸さんの方を見てニコッと笑うと苦々しい顔が帰ってきた。
【みく視点】
トイレから帰ってみれば、さっきより明るい空気になっていた。私が居なくなって、いつものメンバーで話していたからだと思った。でもそれははてなのよく分からない言葉から、私以外でいたから盛り上がってた訳では無いことにはすぐ気づけた。まぁ、何言ってるかは分からなかったけど。
はてなとは小さい頃からずっと一緒にいて、私の唯一の心の拠り所だった。体調を崩しがちで、学校も休みがちな私に、ずっと寄り添ってくれていた。
女子1「ねぇ美紅〜、ちょっといい?」
1度も話したことの無いクラスメイト。名前すらうろ覚え。藍ちゃんとよく話してたっけな……?
授業も終わって、あとは帰るだけだし、はてなに待ってて、とだけ伝えてついて行くことにした。
この判断は間違いだったかもしれない。
女子1「仮病ウザイよ」
みく「え……?」
仮病。確かにこの子はそう言った。今までの人生、全く仮病を使ったことがないと言えば嘘になる。1度くらいはあるだろう。でもなにか、この子の言う仮病はそうじゃない気がする。
女子1「瀬戸くんの気引くためだよね。いつも体調悪いフリして。」
みく「ちがっ……」
女子1「言い訳いらないんだけど。ウザイからやめてって言ってんの」
これは……。典型的な話の通じないタイプ。小説で見た事あるよ、こんな展開。少女漫画とかで見たことあるよ…。こういう展開、少女漫画なら男の子が助けてくれるけれど、あいにくこれは現実だ。そして私には言い返す度胸は無い。
ぐるぐると頭の中で考えている間にも、女の子はグチグチと愚痴をこぼしてくる。考えていることと女の子の声で、頭がキーンとした。あ、これやばいかも。
すぐ後ろの壁に体を預けてズルズルと座り込む。もう女の子の声は全く聞こえなくて、頭が、目の前がグワングワンと揺れていた。
「……く?みく!!!」
気づいた時には前に女の子はいなくて、代わりにはてながいた。
はてな「あー良かったぁ……。どうしたの?大丈夫?」
みく「うん、大丈夫。」
はてな「何してたのこんなとこで」
みく「ちょっと、ね。」
はてなにはできるだけ悩みは相談したい。でもこの問題ははてなにも、瀬戸くんにも迷惑をかける問題。多分そう言ってもはてなは納得しないだろうし、何も話さない私をすごく心配すると思う。でも、大丈夫だって言っておかなきゃ自分が壊れてしまいそうで。
はてな「美紅?本当に大丈夫なんだよね?」
みく「うん、大丈夫、ほんとに大丈夫。」
これはもうはてなに向けてじゃない。自分を錯覚させるため。大丈夫、大丈夫だから、みく、心配するな、大丈夫だから。
はてなと話しながら帰った家は、地獄のようだった。普段温厚なお母さんがヒステリックに叫んで、お父さんも叫んでいた。さっき回復したはずの頭がまた痛くなってきて、今この場にいることは出来ない、そう判断した。
私は、また判断を間違えたのかもしれない。
荷物を片付け、宿題を終わらせた、そのとき。
コンコン
扉がノックされた。私にはわかる。お母さんが来た。
扉を開けると、沢山泣いたのか目元を赤くしたお母さんがたっていた。
母「美紅、おうちでる準備して。」
その言葉とお母さんの顔、そしてさっきの状況から何となく理解した。信じたくない事実。お母さんの涙ぐんだ優しい顔を見ると、私が離れちゃダメな気がして、お母さんをぎゅっと抱きしめた。優しく背中をさすってくれて、すぐに離れると、旅行用のキャリーケースにお気に入りの服と学校の用意、それからお気に入りの本を詰めた。お母さんも手伝ってくれて、間違ったことをしていないと理解してしまったその瞬間、目の前が涙で揺れた。
みく「お母さん、なんで……」
母「ごめんね、みく、ごめんね……」
私を抱きしめたお母さんは、私と同じように涙を流しながら何度も謝った。どうしてお母さんとお父さんが喧嘩したのか、どうしてこんなことになってしまったのか。何となくわかってしまう自分が憎い。昨日の一家団欒を思い出し、余計に涙が止まらなくなった。
一通り泣いて、全部荷物を詰め終わって。お母さんの運転でお母さんの実家まで走った。おばあちゃんもおじいちゃんも、何も聞いてこなかった。久しぶりにおばあちゃんのご飯を食べて、また涙がこぼれてきた。今日は厄日だったな。
布団に入ると色々考え事をしてしまう。音楽を流して気を紛らわす。色々あって、沢山泣いて疲れたからか、すぐに眠りについた。
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