「…起きろ」
ぶっきらぼうな声が聞こえる。段々と意識が戻ってきて、視界も明るくなる。
寝てた、のか…。俺は…
「…むーゆっさっ…!?」
「違う」
俺を見下ろしているのは彼、ではない。
「ず、瑞華…!」
「ごきげんよう、偽りの貴妃様」
お、俺のことバレているのか…
瑞華は流されたのではなかったのか…?
突然の事態に頭が混乱する。い、今までだったら彼が、mfくんが、助けてくれていたのに…
「…、何故ここに?」
「言わずとも。貴方を攫うため。」
平静を装いたいが、全身を縄で縛られて身動きが取れない。相手が女とはいえ脱出は難しそうだ。
「は、離しなさい、私はっ…」
「後宮から身を出した貴方は妃ではない、」
「っ……
どこへ向かう船?」
「私の一族の都。貴方を幽閉するの」
「な、なんのために…っ」
「貴方の一族のせいよ、私は悪くない。この指示を下したのも私の家族。貴方の一族は私達のことを裏切り、犠牲にした。」
「っ…」
俺の一族のことはある程度学んではいるが、そのようなことは話されたことがない。しかし、もし責任があったとしても、俺が取らないといけないのか?俺は、捨てられた奴なのに…
「貴方が犠牲になるのは仕方のないこと。私がお父様に叱られてしまう。貴方の一族が裏切らなければっ…」
「私を幽閉して何になるの…?」
「それは…私の悔しみもあるけれど、帝はきっと助けに来るわ。お金目的や、男に一途な帝など誰も必要としないもの、きっと裏ではバレたら大変なことよ。金と、権力と、そして償いの志」
「…、」
「さ、そろそろ着くわ。私はこれから近況報告に行くの。貴方は私の身内に従いなさい、その状態じゃあ女なら、身動きできない筈、よね?」
「…!」
ば、ばれてしまう。俺がここで動いてしまったら。mfくんの命は助かっても、二度と会えなくなる。
頬を涙がつたって擽ったい。こんなときに彼が抱きしめてくれたら。俺は…。
今は自分の身元がバレぬよう、女のふりを。そして彼が着くまで、待っていなければ。
NEXT1000
コメ返遅れます、ごめんなさい!!!
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あぁ…みんな立場ががんじがらめで苦しいですね…((((; ;)))今回もドキドキでした…!mfくん早く来てくださいぃ(涙)