『宴会執事』
そう呼ばれる彼を見たのは、貴族階級の皆を集めた舞踏会の日。室内の暑さにやられて中庭に出た時に会った。
「君はパーティーに行かないのかい?」
「あ……いえ……。僕はまだやることが…」
「やること?あぁ…君は確か執事だったね。」
「ほとんど雑用ですけど…」
苦笑いする彼の顔に、私はどこか魅力を感じた。
目元の酷い傷はここの屋敷の誰かに付けられたものだろうか。1度話しただけでも分かる気弱さだ、きっと何かの腹いせにでもやられたんだろう。
「バルサーク卿は……戻られないんですか…?」
「あまり話しの合う人がいなくてね。」
「そうですか…」
「皆、化学や天体に興味が無いみたいでね。」
「天体……星のことですか…?」
「あぁ。気になるかい?」
目を輝かせ頷く彼と、私は暫く話していた。
彼は星を見るのが好きらしい。
メイドにワインを貰い2人で飲みながら、1、2時間程話しているうち、彼の頬が段々と赤く染った。
どうやら酒に弱いらしい彼を見ているうちに、その口元の緩んだ赤い顔に触れるうちに、欲が抑えきれなくなった。
「…私の部屋に来ないかい?」
そして、思考と呂律の回らなくなった彼を部屋へ誘い、ベッドへ押し倒し。
そのまま夜を共にした。
「ん……」
目が覚めると、知らない場所にいた。
煌びやかながらも工具や機械、設計図の散らばった部屋のふかふかなベッド。
隣には……昨日一緒に話してくださったバルサーク卿。
そして何より僕が驚いたこと、それは僕もバルサーク卿も一糸まとわぬ姿で寝ていたこと。そして部屋に微かに残るワインの匂いと嗅いだことの無い匂い。鼻の奥にツンと来るような…少し蒸せてしまいそうな体液の匂い。
「…そっか………昨日…僕……」
自身の体の痛みに、昨日の夜の記憶のない出来事が想像ついてしまった。
きっと僕は昨日の夜、バルサーク卿に身体を預けて…。
そのまま抱かれたんだ。
自分で弄ったことも無い場所を触られて。
1人では感じられない快感を覚えて。
「………どうしよう…」
怖かった。もしこれがバレたらどんな仕打ちが来るか。
またあの細身な鞭で打たれるのか、鎖で吊るされるのか。それとも水桶に顔を漬けさせられるのか。
「…んん……イソップ…起きてたのかい…?」
どうしよう…起きちゃった……。
そんなことを考える間もなく、僕はバルサーク卿に押し倒された。
「あ…あの……ぼ、僕……」
「いいんだ…昨日は可愛げな顔を見せてくれてありがとうね…。」
そう言いながらも寝惚けているのか僕の首や胸に口付けをしてくる。おかしなことに、嫌気もなく、寧ろ快感までも拾っていた。
「また…今日も部屋に来てくれるかい…?」
断ることも出来ず、寧ろ断る前に僕の口は同意の言葉を出してしまっていた。
あの快感は何だったんだろう。
バルサーク卿の声が耳元ですると、胸がきゅうっとして、顔が熱くなる。触られるだけで甘い声が漏れてしまう。
僕は何か…イケナイ事でも覚えてしまったんだろうか。
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