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伏黒恵『』
五条悟「」
『こんな世界…』
と嘆く誰かの
生きる理由になれるでしょうか?
これは僕が今君に贈る
「最初で最期の愛の言葉だ」
その日、僕は幼馴染と歩いていた。
お手洗いに行ってくると伝え、
建物の中へ向かった
数分後、人だかりが出来ていたから行ってみるとそこには…
轢かれた恵がいた
その姿を見た途端、街も、人も、歪みだしたように見えた
化け物だと気付いたんだ
欲動に巣食った愚かさも
いつも通りサングラスをしていたのに全てがこの目に映ってしまう
シアトリカルに手の上で
誰も、彼も踊らされる
生まれた意味だって知らぬまま
形骸化した夢は錆びついてしまった
「愛をください…」
きっと誰もがそう願った
「愛をください…っ」
そっと震えた手を取って
「愛をください…っ!」
心を抉る
「醜いくらいに…っ美しい愛を…!」
『こんな世界』
と嘆く誰かの
生きる理由になれるでしょうか?
「幸せもいつか終わる」と気付いた日から
死へと秒を読む心臓だ
「ねぇこのまま雨に溺れて、藍に溶けたって構わないから」
「どうか、どうかまたあの日のように傘を差し出し笑って見せてよ…っ!」
もしも夢が覚めなければ
姿を変えずにいられた?
少し意識のあった恵の解けた指から消える温度
血を巡らせるのは誰の思い出?
雨に濡れた配線のような点滴の通っている管
煤けた恵のいた病棟
並んだ送電塔のような心電図
夕暮れのバス停みたいな点滴棒
血液の機能が停止して止まったままの観覧車みたい
机に咲くお見舞いの花
恵はまだ話せなくて声が聞けなかった
恵が死んだ後、何もかも最初からなかったみたいに病室が綺麗に片付けられてしまった
死にたい僕は今日も息をして
生きたい恵は明日を見失って
「なのにどうしてこんなに悲しいんだろう…」
「いずれ死するのが人間なのに…」
「永遠なんてないけど…思い通りの日々じゃないけど…」
「脆く弱い糸に繋がれた…」
次の夜明けがまた訪れる
「どんな世界も恵がいるなら…っ生きていたいって思えたんだよ…」
「僕の地獄で恵はいつでも…絶えず鼓動する心臓だ…」
「いつしか恵がくれたように…」
「僕も誰かの心臓になれたなら…っ!」