コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
side ウミ
俺が自殺をしようとしてから2週間が過ぎた。
マイもセラもあの日から俺とよく話してくれる。いつもとても楽しい。
2人はあの後いじめっ子達を退学させようとしていた。
俺はなぜか止めた。
退学になって終わりなんか、許さないと思ったのかもしれない。そのぶんそいつのことは先生にいって、警察にも存分に叱ってもらった。
以後そいつたちはクラスでの人気者。更正したのかな、よかったと思う。
俺にもいっぱい謝った。俺はわざと冷たく脅し、今後だれもいじめないように約束した。
そして最後にわらうと、その子達も嬉しそうだった。
あの日々はとても辛かった。忘れたかったけれど忘れられなかったし、この感情を忘れてはいけない気がした。
これからの人生で俺や周りの人が誰かに同じことを繰り返すことのないように。
俺はこれを覚えておくべきなのだ。
「おはよう。」
朝、俺の家の前に、セラとマイが来た。俺は明るく挨拶した。
「おはよ!ウミ!」
「おはよう。ウミ。」
二人も次々に笑って挨拶した。あの日から二人と一緒に学校へ行っている。
毎日の何気ないやり取りが楽しい。
最近俺はセラのことばかり見ている。
キラキラしている気がする。俺のなかで一番かわいくて、かっこいい。
セラのことが愛おしい。ずっと一緒にいたいな、なんて、恥ずかしくて、言えないけど。
学校で、進路希望調査用紙が配られた。
俺は、近くの五月第一高校へ行くつもりだ。マイもセラも多分、同じところ。
俺は五月第一高校へ行くと言ったとき、みんなにもったいない、と言われた。
だけど、俺たちは小学校の頃から、ずっと一緒にいよう、と約束していたから、俺はどうしても五月第一高校へ行きたかった。
その日の午後。俺とマイとセラは3人で図書室に集まって、話をした。
「そういえば、進路希望調査用紙配られたよな。」
マイが言った。
「そうだな、俺は五月第一高校って書くつもり。二人もだよな?」
俺は聞いた。多分二人とも五月第一高校へ行くんだと思いつつ。
「うん、そうする。」
セラはすぐに、笑って答えた。違和感を覚える。
あれ?
セラは笑うと目が少しキラッとする。笑うときは、歯茎が見えるまで笑う。
それなのに今は口を閉じている。どうしたのだろうか。
「三人でいたいから。ほら、約束じゃん、」
「俺も。」
マイは笑った。セラも笑っている。歯は見せないまま。
「入れるかな?」
セラが言う。
「勉強頑張るから。」
マイは真剣な目付きで答えた。
次の日、セラは休んでいた。風邪を引いたみたい。
休み時間、電話をかけると、長い長いコール音の後、「もし…もし、…」と、苦しそうな声が聞こえた。若干涙まじりだ。
「移ったら、いけない、から…来なくて、いいからね……?」
セラは、ふうっと息をついて、
「ごめん、切るね…」
と言った。電話は切れた。横で、一緒に聞いていたマイが、嘘だ、と言った。
「セラ、泣いてるだけで、風邪ってのは嘘だ。でも…泣いてる。」
マイは辛そうに顔を歪めた。俺もそれには同意見だった。
「なんで…」
俺はマイの顔を覗き込んだ。マイの顔の横にかかる髪を寄せる。
「セラも辛そうだけど…マイが辛そうだよ?」
マイは黙った。
「まあ、セラが辛いのを見るのは辛いな。」
「そうか。」
俺は短く返した。俺だって悔しい。でも隠した。
「時間、まずいな。」
時計が指す時間は、チャイムの1分前だった。
マイと俺は、走って理科室に移動した。
セラがどうしているのかは気になった。でも、行かない。来てほしくないみたいだから。
俺は、マイにも行くなと言った。マイは目を細くしていた。
「行かない」
隣で、マイははっきり言った。