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「おーい、立花。聞いてる?」
「う、うん。ありがど、大丈夫だよ。 多分私の方が終わるの早いし待ってるね」
そう返事をしてから、
「そういえば坪井くんは何の用だったの?」と、小野原で占められた頭を切り替えようとする真衣香のことを、坪井はジッと見て。
「小野原さん、なんか聞いてきたの?」
見透かしたような少し鋭い声で真衣香に聞いた。
その問いに、すぐに答えられない。
答えはシンプルなのに。
いつのまにか姿を消した、小野原と目があったドアの隙間を眺めながら、声を絞り出すように発した。
「……どうして?」
「ん?いや、朝見られてたのかなって。お前と別れた後仕事してたらさ〜、チラチラ視線がうるさいのなんのって」
それは小野原さんが坪井くんのこと好きだからなんじゃないの? とは、言い出せない。
さっきから心の中と発する声が一致しない。
それを、なぜかと考える。
坪井が毎日一緒に仕事をする人に知られるのは嫌なんじゃないか……。
というのは、もっともらしい理由で、しかし今は言い訳に過ぎない。
(小野原さんみたいなキレイで素敵な人が自分のこと好きだって知ったら、嬉しいよね)
二人の距離感をもちろん真衣香は知らないが、小野原の態度からわかるのは伝えていないということだ。
それは、これから発展する可能性を持っている関係だ。
知ってしまったら進むかもしれない関係だ。
(私なんて、坪井くんに彼女がいないからたまたま声掛けてもらっただけなんだし)