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風が抜ける山の中、夕暮れの任務地に降り立ったのは、不死川実弥と冨岡義勇。
鬼の目撃情報があった山村の裏手に入り込み、探索を始めていた。
「……しかしよォ、なんで俺とテメェが組むんだよ」
「俺が選んだわけじゃない」
「チッ……ま、任務さえ終わりゃどうでもいいけどな」
険しい山道を黙々と歩きながらも、実弥は枝を踏んで音を立てる。
義勇は静かに後ろからついてきた。
やがて、森の中に妙な気配が漂った。
「来てるな……この辺、空気が違う」
実弥が立ち止まり、周囲を見回す。
「待て」義勇が低く呟く。「罠の気配がある。踏むなよ」
「そんなもん、気をつけりゃ──」
バシンッ!!
突然、地面から仕掛けが作動し、ロープが実弥の足に絡まり、そのまま――
「うおわっ!?……っ、何だよこれ!!」
バサァッと葉が舞い、実弥は木の枝からぶら下がる形で宙吊りになった。
義勇は……何も言わず、その様子を見上げていた。
「おい冨岡ァァ!! 何見てやがるッ!! さっさと切れェ!!」
「……」
義勇はただ、少しだけ目を細める。
「テメェ、笑ってねぇか!? 今、ちょっとだけ口角上がっただろ!? やっぱり笑ったろ!!」
「……いや、笑ってない」
「嘘つけこの無表情柱ァァ!!」
実弥はロープにぶら下がりながらジタバタするも、ロープは意外にしっかりしている。
義勇は一歩近づき、ふむ……と顎に手を当てる。
「……これは、いい構造だな。参考になる」
「は!? なに参考にしてんだテメェは!!」
「いや、罠の作りが精巧だという意味だ」
そのとき、カサリと草を踏む音。2人が構えた刹那、現れたのは一匹の猫。
「……猫」
「猫じゃねえよ今見るとこそこじゃねぇ!!」
義勇は猫に軽く会釈し、そのまま実弥に近づいた。
「動くな。斬る」
「わかった、早く──」
ズバッ。バサッ!
ロープが切れ、実弥が真っ逆さまに落ちた。
「いってぇぇぇッッ!! もうちょっと下から切れや!!」
「すまん。風の流れでズレた」
「言い訳すんなぁぁ!!」
猫はそんな2人を尻目に、のんびりと尾を揺らしながら森へ戻っていった。
その日の任務は、鬼を倒す前から実弥の体力が半分削られていたという──。