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「わぁー。相変わらずご立派しゃんなのれしゅ」
ビンビンに勃ち上がった息子にちらりと視線を注いだ荒木羽理が、「さすがビッグマグニャム」とつぶやいたのを聞いて、屋久蓑大葉は耳を疑った。
「おい、待て。ビッグマグナムって……」
問い詰めようと荒木の腕を掴んではみたものの、お互い裸なことに気が付いて目のやり場に困ってしまう。
(いや、こいつは俺のを食い入るように見てるけどな!)
そのことに気が付いたら、逆に恥ずかしくて隠したくなったのは素面の大葉の方で。
まだ酔いの抜けていない荒木は、惜しみなく裸をさらしてくれている。
(いや、有難いんだけどなっ? さすがにこんな状態の荒木の裸をまじまじと見るのは男として駄目だろ!)
慌てて脱衣所へ用意してあったバスタオルを二枚手に取ると、自分の腰元を隠しながら彼女にも頭からバサリと布を被せてやる。
お陰様でと言うべきか。大葉はつい最近どこかで聞いた気がする〝ビッグマグナム〟について、荒木に問い詰め損ねてしまった。
「もぉ、まぁ~らわらしの裸見ましたね? 屋久蓑部長のえっちぃ~」
言いながらもキャハハと笑う荒木羽理は、酒のせいで羞恥心をどこかに置き忘れているらしい。
と言うか。
股間を隠した大葉は、いつもの調子を取り戻してきて。
「ところでお前! 風呂は明日の朝入れって言っただろ! 何でいま入ってるんだ!」
「らってぇ~。ベタベタしれ気持ち悪かったんれしゅもん」
(いや、それは帰り際にも聞いたけどな!?)
まだこんなにフラついてるのにシャワーを浴びたんだと思うと、転倒しなくて良かったと心底ホッとした大葉だ。
「とりあえず、風邪ひいちまう。さっさと身体、拭け!」
ポタポタと水滴を落とす荒木を見かねて大葉が言ったら、彼女が頭を拭こうとしてバランスを崩して。
「危ねっ」
思わずその身体を抱き留めた大葉だったのだけれど。
「やーん。ご立派しゃんが当たってましゅー」
「わ、バカ、触るなっ、……あっ」
荒木にタオル越し。
スリッと息子を撫で上げられた大葉は、思わず喘ぎ声を上げた。
「わぁ~、思っらより固くれビックリにゃのれしゅ」
「だ、から……勝手に触ん、な……、ふ、ぁっ!?」
荒木羽理の小さな手でギュッと股間を握られた大葉は、理性を総動員して暴発しそうになる息子をなだめた。
と言うより――。
「……手を放、せ! この破廉恥娘っ!」
下腹部へ伸ばされた荒木の濡れそぼった手首を握ったら、思いのほか細くて驚かされて。
(こんな細腕、俺の片手で簡単に押さえ付けられちまうじゃねぇか)
彼女はそういう危険性を分かっているのだろうか。
手を掴まえて荒木羽理の頭上で一纏めに束ねたら、彼女に被せたバスタオルがはらりと二人の足元へ落ちた……。
そうしてまろび出た、決して大ぶりではないけれど形の良い、それこそ大葉好みの荒木の胸がツンと天を突いて揺れるから。
大葉は吸い寄せられるようにそこへ手を伸ばした――。
そんな淫らな想像をしてしまった大葉は、フルフルと首を振って危険な妄想を払いのけた。
「わらし、男の人のココ、触ったの初めれれす」
――感動しましらっ!とわけの分からない感想を述べている荒木を見下ろしながら、大葉は〝初めて〟と言うところにピクンと反応する。
「荒木。お前、彼氏、いたんじゃなかったのか」
「居ましらけろ……。恋人の居ら人間が皆自分みらいにエッチしらころあるろ思うなよぉ、屋久蓑大葉」
腕の中の荒木が、キッと大葉を睨んでくるのがたまらなく愛しくて。
(そうか。経験ないのか……)
やけにホッとしてしまったと言ったら、彼女をますます怒らせてしまいそうで、大葉は声に出さずにその事実を噛みしめた。
「とりあえず、タオルを身体に巻け。頭は俺が拭いてやる」
「どらいやぁもしてくれましゅか?」
「ああ、してやる」
「やったぁー。屋久蓑部長大好きれしゅ~♥」
酔っぱらいの言うことなんて宛てにはならないけれど……。
悪くないと思っている相手に〝大好き〟だと言われた大葉は、こういうのもいいなと思って。
自分の頭もまだ適当にしか拭けていないけれど、腕の中の荒木羽理のことをとことん甘やかしてやろうと思った。
***
風呂から上がるなり頭から水滴を滴らせながら腰タオル姿のまま。
キッチンへ直行して、椅子を持ち運び始めた飼い主を不思議そうな顔で見上げながら、キュウリが爪音をカチャカチャ言わせながら大葉の後を付き歩く。
(ああ、そろそろ爪切ってやらねぇとな……)
その音を耳にしてそんなことを思いつつ洗面所へ戻ったら、大葉の足元を見た荒木羽理が、「ああ~ん、ダックス~。可愛いれしゅねぇ~」とヘラリと笑った。
てっきり完全に猫派で犬には興味がないと思っていた荒木に手放しで愛犬を褒められた大葉は、嬉しくなって。「美人だろ。うちのう……、キュウリ」と答えた。
(やべっ。危うくコイツの前で〝ウリちゃん〟とか呼びそうになっちまった)
さすがにそれは変な誤解を招きそうだと思って。
「とりあえず座れ」
大葉は失態を誤魔化すみたいに荒木の手を引いて持ってきた椅子へ座らせた。
ふにゃふにゃと所在のない彼女を、いつも自分を拭くときみたく雑に扱ったりせず、壊れものに触れるみたいに丁寧に優しくタオルドライしてやる。
ドライヤーを手に、「熱かったらすぐ言えよ?」と言ったら、「はぁーい!」と荒木が勢いよく手を挙げて。
(バカっ。そんな激しく動いたらタオルが外れちまうだろ!)
無防備すぎて死ぬほど心臓と股間に悪い。
早いところ髪の毛を乾かしてやって、さっさと服を着せてしまわねば、と思った大葉である。
まさかこんなに早く、荒木から託された着替えが役立つ日が来るとは思わなかった。
本人からの言いつけを守って袋の中身は確認していないが、ちゃんとこうなることを想定して酔っぱらっていないときに彼女自身が用意したものだからきっと大丈夫。
そう思うのに、何故か胸騒ぎがするのは何故だろう。
乾いてくるにしたがって、荒木の髪の毛から匂い立つ自分のモノとは明らかに違うフローラルなシャンプーの香りに照れ臭くなった大葉は、ポタリと頬へ水滴が落ちたことを気にした体で、荒木を拭き終えて湿っぽいままのタオルを使って、自分の頭をガシガシと適当に拭いた。
そのせいで余計に彼女の香りを意識してしまって、動かす手に変な力が入ってしまう。
それを鏡越しに見た荒木が、
「ああ、屋久蓑ぶちょ、しょんなに強く拭いたりゃ禿げちゃいましゅよぅ?」
――もぉ、困った人れしゅね、と言いながら椅子からヨロリと立ち上がると、大葉に向かって手を伸ばしてきて。
「ほりゃ、今度はわらしが部長を拭いれあげましゅ。しゃっしゃと座っれくらしゃい」
大葉のむき出しの背中をペシペシと叩いて急かした。
そんな荒木の覚束ない足取りに不安になったのか、キュウリがサッと足元から飛びのいて。
大葉はそれを見てドキッとする。