テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
82
376
――ガチャン!
校舎中の扉が、一斉に閉まった。
ちぐ「きゃっ!」
ぷり「な、なんだ!?」
けちゃ「扉が開かない!」
まぜ「……鍵がかかってる」
あとが扉を何度も引く。
あと「くそっ……!」
西あき「…………」
あきは動かなかった。
ただ、黒羽零を見つめていた。
あき「……あなたがやったの?」
黒羽零「僕じゃない」
あき「嘘」
黒羽零「本当に違うよ」
零は穏やかな顔をしている。
「これは――」
「シナリオそのものが起こしている」
あき「シナリオ……?」
零「そう」
零が窓の外を見る。
黒い羽根が、雪のように降り続いている。
黒羽零「君が本来の物語から外れたから」
「物語が修正を始めたんだ」
あき「…………」
「修正……?」
黒羽零「君は、本来ならここにいない」
「この時間に」
「この場所に」
「そして――」
零があきを指差す。
「この性格でもない」
「…………!」
あきの眉が動く。
あき「どういう意味?」
黒羽零「本来の西園寺あきは――」
「もっと残酷だった」
「…………」
ちぐ「……!」
零は淡々と続ける。
「天宮ちぐを何度も傷つけた」
「あとを利用した」
「ぷりを馬鹿にした」
「けちゃとまぜを仲違いさせた」
「そして最後には――」
零の視線が、あきの目を射抜く。
「全員を敵に回した」
「…………」
あきは唇を噛んだ。
「知ってる」
あき「……ゲームで見た」
黒羽零「でも、君は変わった」
あき「……そうね」
「私自身も、そう思う」
天宮ちぐが、そっとあきの手を握る。
ちぐ「あきちゃんは、悪い人じゃないよ」
あき「……ちぐ」
ちぐ「だって、私を助けてくれた」
「ケーキも一緒に食べてくれた」
「それに……」
ちぐは笑う。
「私のこと、心配してくれた」
西あき「…………」
胸が熱くなる。
黒羽零「だからこそ――」
零が目を細める。
「世界が君を異物として認識した」
「異物……」
黒羽零「この世界にとって、君は存在してはいけない」
「…………」
あき「だったら」
あきは零を睨む。
「私はどうすればいいの?」
零「簡単だよ」
零が一歩近づく。
「元の西園寺あきに戻ればいい」
「…………!」
ちぐ「え……?」
あと「何言ってるんだ、お前」
零「そうすれば、この世界は君を受け入れる」
あき「……嫌よ」
即答だった。
黒羽零「どうして?」
あき「私は――」
あきは拳を握る。
「もう、あんな人間には戻らない」
「私は私よ」
零「…………」
初めて。
零の表情から笑みが消えた。
「そう」
「なら――」
零が黒い羽根を一枚、空中へ放つ。
その瞬間。
「――来るよ」
「……え?」
ドンッ!!
校舎の奥から、大きな音が響いた。
ちぐ「な、何!?」
ぷり「今の音、何階だ!?」
まぜ「上からじゃない」
けちゃ「……下?」
床が大きく揺れる。
あき「……地下?」
学園には地下施設などない。
ゲームにも存在しなかった。
なのに――。
床の一部が、ゆっくりと開いていく。
その下には。
真っ暗な階段が続いていた。
「…………」
あと「こんなの……」
ぷり「昨日まで、こんな場所なかったぞ」
けちゃ「怖い……」
まぜ「けちゃ、俺の後ろに」
あき「…………」
あきは階段を見つめる。
「知ってる」
あと「え?」
あき「この場所」
「ゲームには存在しない」
黒羽零「当然だよ」
「ここは――」
零が先に階段を下り始める。
「ゲームの裏側だから」
「…………!」
ちぐ「裏側……?」
零「本編に登場しなかった場所」
「削除されたイベント」
「存在しなかった登場人物」
「そして――」
零が振り返る。
「存在しなかったはずの記憶」
あき「…………」
「記憶?」
零「君自身の記憶だよ」
あきの胸がざわつく。
黒羽零「西園寺あき」
「君は前世の記憶だけを持っていると思っているだろ?」
「…………!」
零「違う」
「君にはもう一つの記憶がある」
あき「……何を言って――」
零「この世界で生まれてから今日まで」
「本物の西園寺あきとして生きてきた記憶」
「…………」
あきの頭がズキッと痛んだ。
「……っ!」
あき「何……これ……」
突然。
頭の中に映像が流れ込んでくる。
幼い少女。
西園寺家の庭。
泣いている少女。
『どうして私だけ……』
『誰も私を見てくれない』
『ちぐなんて嫌い』
『私を置いていかないで』
「…………!」
あきは頭を抱える。
ちぐ「あきちゃん!?」
あと「大丈夫か!?」
あき「来ないで……!」
「……っ!」
さらに映像が流れる。
誰かと話している自分。
いや。
――西園寺あき。
『約束したでしょう?』
『私があなたを助ける』
『だから、あなたも私を――』
「誰……?」
その顔だけが見えない。
そして最後に。
黒い羽根。
血。
そして――。
『転生者が来たら、全部終わる』
「――――!」
あきが目を開く。
ちぐ「あきちゃん!」
ちぐがあきを支える。
あき「……私」
「今、何かを思い出した」
黒羽零「そう」
零が静かに笑う。
「やっと始まったね」
あき「……何が?」
零「本当の物語が」
その瞬間。
地下から声が聞こえた。
『――西園寺あき』
「…………!」
『やっと戻ってきたね』
あきの顔が凍る。
その声は――。
間違いなく。
自分自身の声だった。
『今度は――』
『私を消さないでね』
「…………!」
地下の暗闇の中。
誰かがゆっくりと目を開いた。
赤い瞳。
黒い髪。
そして――。
あきと全く同じ顔。
「…………私?」
ちぐ「……あきちゃん?」
あと「いや……違う」
ぷり「同じ顔……?」
けちゃ「どういうこと……?」
まぜ「……双子?」
黒羽零は、ただ静かに笑っていた。
黒羽零「紹介するよ」
「彼女が――」
「本来の西園寺あき」
――物語の中で消されたはずの、もう一人の悪役令嬢だった。
終了.ᐟ.ᐟ
おつむぅ.ᐟ.ᐟ
コメント
1件
えぇ〜!?なにこの展開ヤバすぎる😭💕 「本来の西園寺あき」ってあの赤い瞳の子…まさかの同一人物が二人!? 「私を♡♡♡ね」ってセリフがめっちゃ背筋冷えたし、ちぐがあきちゃんのこと信じて手握ったとこで泣きそうになったよ🥺 裏シナリオとか削除された記憶とか、伏線回収がエモすぎて頭パンクしそう! 次どうなるの!?続き気になりすぎる〜!!🌸💫