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惣吉は渡し舟から川の水面に浮かぶ藤の花弁を見ていた。
足下の風呂敷には、姉のために都で買った簪(かんざし)が入っていた。
船頭は気持ち良さそうに浪花節を唄いながら、舟を漕いでいた。
客は惣吉の他に、大きな風呂敷包みを背負った薬売りの爺さんと、お宮参りからの帰りであろう、旅の身なりをした若い娘が乗っていた。
幼い頃に両親を流行り病で亡くした惣吉は、姉と二人暮らしだった。
五年前、江戸に丁稚奉公に出てから会ってない、親代わりに自分を育ててくれた、姉の喜ぶ顔を見るのが楽しみだった。
昨年、姉は隣村の百姓と夫婦(めおと)になったと、姉からの便りで知った。