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昼過ぎにマダム・オブレから茶会のドレスが届いた。トルソーに飾られた妊婦用の体を締め付けない作りのドレス。着る機会の少ないものなのに、ふんだんに絹を使っているわね。ゾルダークの色を入れるのは変わらないのね。

胸回りは薄い赤の絹で手首まで袖を作り、襟ぐりは黒の麻紐を縫い込み減り張りをつけ、太い黒の麻ひもで胸の下を絞り、スカート部分は黒い絹を多く使いうねらせて、その上に薄い赤の絹を中心から左右に開き纏わせ、黒色を覗かせている。あまり着たことのない配色だけれど可愛いわ。


「可愛らしいわね」


隣で鑑賞しているジュノが頷く。


「お嬢、俺もゾルダークの正式な騎士服を着て行くんですよ、この前採寸されました」


後ろからの声に振り返る。ゾルダークの騎士服は見事に全身黒。首を守るため詰襟になっていて、銀糸で胸にゾルダークの家紋が刺繍で施され、袖口に黒糸で蔦模様が入り、膝下までの長い編上げ靴を履く。かなり厳つい制服。誰かのを借りると思っていたけど、作ってくれるのね。赤毛のダントルに黒は似合うだろう。


「きっと素敵よ、早く見たいわね。ダントル、ありがとう」


ダントルは何に対しての感謝か理解できていないのか、首を傾げている。その時、扉が叩かれカイランが部屋に入ってきた。


「ドレスを見せてくれ。随分可愛いね」


トルソーの着ているドレスの前で観察するカイランは、私が選んだと思っているだろう。ハンクから贈られたとは言わないけれど。

婚姻してからカイランからドレスを贈られていないのよね。新婚なら夫が妻にドレスを贈るのは当たり前なのに…そんなカイランに笑ってしまう。私の笑みの理由などわからないカイラン。彼は元々が夫失格なのね。


「気に入ったようだね」


ええ、とてもと答える。


「キャスリン様」


私を呼ぶ声に振り向けば、開けられた扉の横にハロルドが立っている。


「どうかして?」


ハロルドはカイランをちらりと見て話し出す。


「茶会の参加者について報告です」


それを聞いたカイランは、自分も聞くと私の手を掴みソファに座り込む。ハロルドは扉を閉め話し始めた。


「参加者はキャスリン様がご存知の通りですが、中に思惑を持つ令嬢が多数いらっしゃいます。ランザイト伯爵アビゲイル様はカイラン様の愛人を狙っており、ハインス公爵姉妹は第二夫人狙い、レディント辺境伯ノエル様は敵意、コンラド侯爵ローズ様は嫉妬。危険があるのはハインス公爵姉妹です。触れられないよう気をつけてください」


多数?マイラ王女以外の全員の名前を言ったわよ。カイランの人気は高かったのね。リリアン様がいなければ、学園時代に面倒なことになっていたかもしれないわ。リリアン様が恋しくなるわね。

カイランは私の手を握り離さない。


「危険とはなんだ?キャスリンを害する気か!」


カイランはハロルドに激しく問う。


怖いのはハインスね、まだ二人とも学生のはずよ。私がこんなに早く身籠るとは予想外だったのね。カイランはリリアン様に懸想したままとでも思っていたのか、夫婦仲が良くないと思っていたか。子がいなければ卒業する頃には第二夫人に収まれる、頭が悪いのかしら。そんなに単純に思い通りになると…他の令嬢は嫌味を言うくらいよね、そちらは問題はない。


「カイランは人気者ね。触れられないようにとは?」


「警戒をと閣下からの伝言です」


何を仕込んでくるか不明、何もしてこないかもしれない。警戒しておけばいいのね。


「キャスリン、参加はなしだ。行くことはない」


カイランを見つめる。それではあのドレスが着れないわ、なんて言ったら怒るかしら。


「ダントルを連れていくのよ、守ってくれるわ。それにマイラ王女がいる場で私に何かするのは悪手よ。未来の王妃の前よ?私なら茶会で事を起こさないわね」


疑惑を持たれただけで信用は落ちるわ。そこまで愚かだとは思えないけど、公爵家よ、教育されるわよね?カイランを見ていると不安になってきたわ。


「君の護衛騎士は王宮に入れないだろ?僕が付き添う」


夫が妻の茶会に付き添うなんて聞いたことはないわね。私はカイランの手を叩き、落ち着いてと話し出す。


「ダントルはボイド子爵の庶子なのよ。閣下がボイドを名乗る許可を当主から頂いたわ。だから安心して、側に置くから」


カイランはダントルを振り返る。ダントルは無反応だけど。


「知らなかった。何故教えてくれない」


悪いことはしていないのに、悲しそうな顔をしてくれるわね。


「私は閣下に教えていないわ、ゾルダークに入れるのだから調べたのでしょ。私はダントルを平民として側に置いていたの、彼の望みだったからよ。けれどボイドを使うことになってしまったわね」


私は振り向き、ごめんなさいねとダントルに謝る。ダントルは軽く首を振り答える。ハロルドに向き直り続きを聞く。


「まだあるの?」


ハロルドはダントルに目を向け話し出す。


「ダントルに閣下から命令です。公爵家だろうとキャスリン様に触れる者は阻止していい、キャスリン様の背後に立て、だそうです。何か言われたら閣下の名前を出してください」


それは…恥ずかしいわ。背後に真っ黒のダントルを置くの?夫が付き添うくらい聞いたことないわよ。参加しない方がいいのかしら。でも、茶会は高位貴族の考えが伝わるのよね。


「ハロルド、レディント辺境伯のノエル様の敵意とはなんなのかしら?彼女とは面識がないわ」


「ディーター侯爵家が力を付けることが気に入らない貴族は多いそうです。レディント辺境伯令嬢は今、王宮に滞在しておりますが、夜会でキャスリン様を見て妬みが増したのでしょう。辺境伯は王都の学園にも通わない、田舎貴族です。華々しく現れたキャスリン様が羨ましいのでは?」


よくわからない思考ね。ハインス以外は言葉で攻撃してくるのね。わかっていれば怖くもないわね。


「わかったわ、教えてくれてありがとう。心の準備ができるわ」


私が笑顔で答えると、カイランは納得してないようで、不安そうにまだ手を返してくれない。


「帰りを待っていてね、忍び込んでは駄目よ。彼女達の狙いは貴方なのよ。面倒事は嫌よ」


カイランが来たって彼女達が喜ぶだけよ。愛人が欲しいなら高位貴族からは選んで欲しくない、親まで絡んでくるもの。

ハロルドが頭を下げ出ていこうとするのを止める。


「茶会が終わったらまた商人を呼んでくれる?私は外に出られないから、買い物をしたいの。菓子職人も呼べたら呼んで欲しいの」


ハロルドは、かしこまりましたと答え部屋を出ていった。


「僕は心配だよ、君は身重だ。何かあったら…」


本気で心配しているのかしら。カイランがよくわからないわ。私はカイランの手をとり下腹にあてる。


「子が動いてるわ、感じる?さっきから起きてるのよ」


カイランは黙り込み手をあてている下腹を見つめる。


「ああ、中から叩いてる!すごいな」


カイランは手を離し、下腹に耳を当てる。

そこまでしなくてもいいのだけど、心配は消えたようね。こう見ると親子ね、似ているわ。つい頭を撫でそうになってしまった。これが本来の夫婦なのよね、可笑しいわ。


茶会が楽しみね、何を言われるのかしら。レディント辺境伯令嬢が側にいるのなら、マイラ王女は敵になっているのかしらね。

カイランが夜会嫌いで助かったわ、そんなに人気があるなんて…どこかで媚薬でも盛られて令嬢を孕ましていたかもしれない。


「カイラン、媚薬には気を付けるのよ?アビゲイル様は盛りそうだわ」


まだ下腹で子に叩かれているカイランに忠告する。愛人にするなら下位貴族か平民を薦めるわ。カイランは嬉しそうに下腹で頷く。


「わかったよ」


そう言っても、心配だわね。カイランは詰めが甘いのよ。





貴方の想いなど知りません

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