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「それは…俺たち皆が、それぞれ思うところがあって……でも決して才花さんが謝ることではない。そこは間違えないでください」

「一樹の言う通りだ。才花は被害者…被害者なんて一言で済ませられないような痛みと思いをまだまだ抱えてる。俺もタクも毎日それを見てるし、小松さんも一樹も同じように見てる。頑張れも、大丈夫も…悔しいなんて言葉も容易に言えない気持ちでな」


羅依は私の頭に頭をコツッと当てて


「小松さんだって、何も無駄なんて思ってないでしょ?」


と前を見た。


「才花にしたことで無駄なことはない。成美が‘感性や感覚で生きていく子よ’と才花のことを言い表した、その感性や感覚を伸ばす手助けになったと自信を持って言えるからね。それに世界チャンピオンじゃなくても、私の可愛い娘だから」

「小松さん。才花ちゃんが小松さんの金で、Scenic Gemで踊りまくって、遊びまくっていても無駄には思わないよね?」


タク…それはあんまりじゃないだろうか…


「思わないね。元気に遊んで、それも才花の自分の表現の仕方だと思うだろうね。まあ、これだけダンスを極めたことを知った今の感覚で言うなら、Scenic Gemを乗っ取って、queenと呼ばれるくらいのヤンチャをしてくれたって大歓迎だよ」

「…そんなヤンチャはしません…!出来ません…!」

「「「出来る」」」

「……3人…さすがお友達…」


何故だか少し場が和み、私は冷めた珈琲を口にしたのだけれど、皆の視線を感じる。


「何?」

「いやぁ~才花ちゃんがScenic Gemで客を煽ってた姿を思い出してるんだよ」

「…タクはね…羅依は、何?」

「俺も」

「…一樹さんは…?」

「俺も」

「おかしいよね、羅依?」

「おかしくない。才花を探すために店のカメラ映像を一樹に渡したから」

「写真?ビデオ?」

「ビデオ」

「私も昨日になって、一樹に見せてもらったよ」


小松親子は何をやっているんですか…


「そんなこともありましたけど…はい…煽ってはいないよ…」

「煽ってた才花も良かったね」


はっ?父は何を言ってるんだ?


「あれは、ポイントを取りに行くダンスでなく、自分の心と体が弾んでるダンスだよね」

「それです、小松さん。あのときの店内の雰囲気は独特でしたよ」


羅依がそう言うと


「才花さん、リハビリ程度に踊りに行くなら、俺がScenic Gemに付き合いますよ。羅依とタクはフロアに降りないし、もちろん親父と出掛けるのは良くない。俺は組員じゃない。あんな仕事はしていますけど…いいよな、羅依?」


一樹さんが羅依を見てから父を見た。

ここで部屋のベルが鳴り、一樹さんがドアを開けに行くと


「ありがとうございます、ここまでで。あとはこちらで大丈夫です」


と言っている。

何だろう、と思っていると一樹さんがワゴンを押して戻って来た。


「わぁ…アフタヌーンティー」

「大きなワッフルやパンケーキも美味しそうだったけれど、才花はサンドイッチやスコーンのある、甘いばかりでない物を好むかと…何も知らないから予想したんだが…」

「はい、ありがとうございます…おとーさん……恥ずかしい…」

「俺は…お兄ちゃんは無理ですか?紅茶も淹れますね」


お兄ちゃんか…羅依を見ると


「才花の家族だな」


そう言って私の髪を撫でる。


「家族…そうなんだね…うん…家族のような者だと言われたことはあるけど」

「香さん?あれは、よく分からないね」

「うん?拓史?」

「香さんは才花ちゃんの叔母さんの娘って言えば、小松さんも分かります?」

「ああ、分かるよ」

「自分のことだけ考えている子ですよ。才花ちゃんが入院していても」

「タク、いいの。しーちゃんと仲良くやってるんだからいい。いただきます」


私がサンドイッチを取ると


「スイーツは減らして、フルーツにしてもらったから。ケーキが欲しければ、また注文しよう」


と父が言った。


Kingの寵愛 ~一夜のお仕事だったのに…捕獲されたの?~

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