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第十八話:決意の朝
陽翔は早起きして、リビングの机で静かにノートを開いていた。
いつもよりずっと静かな朝。
でも、彼の心はざわついていた。
「……俺、変わったよな」
ふと口に出してみると、不意に後ろから真白の腕が伸びてきて、後ろから優しく抱きしめられた。
「いいほうにな」
「うわ、朝から甘やかしモード?」
「だって、今日大事な日だろ?」
「……なんで分かるの」
「顔見たら分かるって」
陽翔は照れくさそうに笑いながら、ノートを閉じて、深呼吸した。
「……今日、先生に推薦の希望出す。
県内の進学校。先輩が行く大学の近く」
「マジで?」
「あんだけ迷ってたけどさ、やっぱり一緒にいたい。
そのために、俺は俺の道を選ぶ」
真白は少し目を丸くして、それから強く抱きしめ直した。
「……よく言った。
俺、そういうお前のこと、世界で一番誇らしい」
「言いすぎ」
「ほんとだって。
その代わり、推薦ダメだったら俺の部屋掃除一ヶ月な」
「え、地味にキツいやつ……!」
ふたりは笑いながら、お互いの額を軽くくっつけた。
⸻
──放課後、職員室前
陽翔は、プリントを握りしめて職員室の前に立っていた。
手汗がじんわり。
でも、もう迷いはなかった。
トン、とドアをノックする。
「失礼します。推薦について、ご相談したいことがあって……」
⸻
──夜、アパート
「おかえり」
帰ってきた陽翔に、真白はそっと笑って言った。
「行ってきたか?」
「うん、話してきた。
先生はびっくりしてたけど、“いい目をしてた”って言われた」
「それは陽翔史上一番カッコいい報告だわ」
「でしょ?」
陽翔は照れながら、真白に寄りかかるように座った。
「……先輩、俺さ」
「ん?」
「“好き”って、ただ気持ちだけじゃなくてさ。
こうして未来を一緒に選んでいけるのが、すごく幸せだって思った」
真白の手が、陽翔の髪をそっと撫でた。
「お前、ほんとに大人になったな」
「それ、褒めてる?」
「もちろん。俺も、ちゃんと迎える準備する。
お前と、“大人の世界”で並んで歩くために」
「その言い方、なんかちょっとエロい」
「意識して言ってるけど?」
「やっぱりかよ……!」
ふたりの笑い声が、夜の部屋にやさしく響いた。