第十九話:誓いの夜
冬の匂いが少しずつ近づいてきた夜。
リビングにはふたりの湯気立つカップと、柔らかい毛布。
テレビの音も、時計の針の音も、やさしくて心地よい。
「なあ、陽翔」
「ん?」
「お前、なんで俺のこと好きになったん?」
陽翔は一瞬、口をぽかんと開けてから笑った。
「え、今さら?」
「今だから聞きたい」
「……強引で、頼りなくて、でもやたら優しくて、
俺のこと見抜いてくるくせに、ちゃんと受け止めてくれるから。
……あと顔がドタイプ」
「結局顔かよ」
「そういうとこも含めて、全部ってこと!」
真白は笑いながら、カップを置いて陽翔の肩に頭を乗せた。
「じゃあ俺も言っていい?」
「え、なに?」
「陽翔と出会ってから、“ひとり”じゃなくていいって思えた。
一緒に笑って、怒って、泣いて、
“未来が楽しみ”だなんて感情、俺は知らなかったから」
陽翔は、静かに真白の手を握った。
「……ねえ、先輩」
「ん」
「もし俺たち、10年後も隣にいれたらさ」
「いれるよ」
「まだ言ってないでしょ……
“10年後も隣にいれたら、その時ちゃんとプロポーズして”」
真白の目が、ふっと見開かれる。
「今じゃなくていい。
でも、俺はそこまで一緒にいたいって、思ってる。
だからその日まで、隣にいて?」
真白は、そっと陽翔の手を唇に当てた。
「約束する。
10年後、ちゃんと指輪持って、プロポーズする。
だから、それまで……毎日惚れ直させろよ」
「……任せといて」
ふたりは目を閉じて、静かに額をくっつけた。
誰にも邪魔されない、あたたかい夜。
それは恋じゃなくて、もう“愛”って呼べるもんだった。
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