テラーノベル
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君が冗談めかしく放った言葉は、笑いで包み空気を和ませる。きっとこれがいつも周りに人が集まる理由。
それは憧れと尊敬の念を抱かせ、その内恋心を伴っていった。君に近づくには、僕を、自分を変えなければいけない。噛み締めつつも常に隣にいる彼を羨む。こんな葛藤を繰り返したのは何度目だろう。
今日も1人のベッドで日照りが心を戻す。
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「変わった事、ですか。そうですねー…」
10周年にもなると、やはり自分の一貫しているところだとか変化といった「本質」にせまった質問が増える訳で。元貴ならきっとすらすら、とまではいかなくても僕よりきっと自己分析が上手だから、カッコよく決めてしまうとばかり思っていた。
「涼ちゃ、キーボードの藤澤と合わせて小学生1人分お体重が大きくなられたかなと…」
思わず吹き出してしまう。それは僕だけじゃなく、周りもで一瞬でこの場を柔らかくしてしまった。慌てていつものノリでつっこむと、満足気に君は笑う。そんな笑顔を見ると期待を膨らませてしまう。僕だけに向けた訳じゃない、と言い聞かせ気持ちを押し殺した。
メディアに出る時は特に長く感じるが、やっと一日の仕事を全て終わらせる。緊張する分なのかな、実際元貴と若井も控え室でメイクを落として貰いながらぐてっとして疲れていた。雑談もそこそこに帰る支度をしていると、マネージャーがひょこっと顔を覗かせ、
「今から出演者とマネージャー集めて飯行かないかって。3人共明日仕事だけど、どうする?」
と言った。デビューしてしばらくは社交辞令でいくら疲れていても参加していたが、今は忙しくなり逆にびっくりされるくらいだ。断るだろうな、と元貴を見やると、予想に反し乗り気な表情だった。
「俺は行こうかな〜。なんか今日は人と居たい気分。若井と涼ちゃんは?」
人と居たい、か。やっぱり誰でもいいのかな。
「俺はパス。明日に向けて早く寝たいしね」
3つの視線がこちらへ向く。正直元貴と少しでも関われるなら行きたい。でも身体は若井と同意見で。
「僕もやめておこうかな。今日はなんだか疲れちゃった」
泣く泣く断りを入れた。こんな時ですら、コミュニケーション力が高い君を羨ましく思う。それに、お酒絡みとなると変な人がよってこないだろうか。すると元貴は一瞬顔を曇らせたように感じる。でもすぐ何ともなさそうに、
「分かった。じゃあ俺残るから先帰っといて」
と言った。妙な感覚を覚えたが、若井に帰ろっか、と呼ばれてそれはすぐ消えていった。
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読んで下さりありがとうございます!
連載始まりました、よろしくお願いします〜このお話に限らずお気軽に感想など頂けると幸いです!
次も是非読んで頂けると嬉しいです。
コメント
2件
新連載、楽しみです✨代名の歌も好きな歌なので、余計に嬉しいです😊