ky side.
突然二人に誘われた。
『なんで?レトさんは?』とメールすると『アイツは飲めないだろ。』と投げやりな返事を返してきた。
だからって…俺が飲まないこと知ってるくせにさ。
一体何なんだよ。
───────────
「よう。」
よく行く居酒屋へと向かい、いつもの席へと向かう。
そうすると、ラフな格好をした既婚者たちがもうお酒を頼んでいた。
「今日…俺なんで呼ばれたの?」
「いやぁ…まぁ…。」
うっしーが頬をポリポリかきながら目を泳がせている。
絶対何かを隠しているな…。
「で?おしえてくれたっていいじゃん。」
「えー………。はぁ…。」
「……好きな奴、いるんだろ?」
「え」
俺は話を聞いていないのか聞いているのかも分からない、ただグラスを眺めている人の方にばっと振り返った。
ガッチさん、言ったな。
「…………いや…分かんない。」
「分からないってどうゆうことだよ。」
「えー…。」
理由を聞かれたとき、その時の自分に向き合ってみた。
「だって……」
だって…うっしーに相談のこと、バレても分かんなかった。
胸がチクリと痛む感じが。
もしそれがないとしても『両思いかも』って感じの胸の高鳴りが俺には全く無かった。
それで、最後の『うっしーに恋をしている』という気持ちの希望の欠片が砕け散った。
「いや…ほんとに……。」
俺が少し俯きながらそう答えると、うっしーがガタンと机を揺らした。
「…………え…?お前…嘘だろ??」
「ん?」
─────────
ちょっと待てよ。あれ?うっしーに俺がうっしーのこと好きだってバレてたのか?
「ね、ねぇ。」
「おん?」
「うっしー…俺の好きな人誰だと思ってんの?」
「え……」
「レトルト……じゃねぇの?」
「…………?……………は?!」
いや、まてまてまてまてまて。
俺がレトさんを?
あの、ゲーム下手な鼻声阿呆アレルギー馬鹿のレトルトさんを??
「ななななんで?」
めをまんまるにして、うっしーが返答をする。
「態度と顔。以上。」
……。
分からない。
分かんない。
──────────
「…じゃあさ、違うっていうんなら、分からなくなる前は誰が好きだったんだよ。」
「そ、それは……」
俺がもごもごと口を開かないでいると妙な圧を二人がかけてくる。
「……ぅっしー…です……。」
「「は?」」
さっきまで何も反応を示してこなかった人まで驚いてくる。
「おれ………ですかぁ……。」
苦笑しながらうっしーがポツリと言葉を呟く
少し間が開いた後、先に喋ったのは相手の方だった。
「…そんで?何で分かんなくなったの?」
いつもよりも低いけどちょっと柔らかいような優しい声がかけられる。
「えっと…。」
「好きって何かなって思ってさ。」
「俺…さっきね……恋愛相談バレてる事うっしーに知られても何にも思わなくてさ。」
さっきの優しい声のおかげか、すんなりと想いを紡げる。
「うっしーに恋してたってバレても、焦りとかもあんまり無くて……。」
「余計に…分かんなくなっちゃった。」
泣きそうな蚊の鳴くような声が口から流れていく。
今まで俺がしてきたことは恋でもなんでも無かった。
それだけのことが今はただ、辛く感じてしまった。
「…そっか。」
「んー…逆にさ、レトルトの事、どう思う?」
そんな…急に言われてもなぁ…。
レトさんのこと、今まで考えたことも無かった。
レトさんは…なんというか…。
「一緒に、隣に居るのが当たり前の人。」
うっしーはその言葉を聞くと呆れたような顔をした。
「なんだ。馬鹿なだけじゃん。」
まるで俺がその事を思っていたのを知っていたかのように優しく微笑んだ。
「好きなんじゃん。レトルトの事。」
「なっ……」
「おーっと…理由をいってあげるからさ。ちょっと待てよ。」
「それはな、存在がでかすぎて気づいてないだけ。」
「いなくなるなんて考えたこと、無いだろ?」
「…うん。」
あの人は絶対にいなくならない。それを俺は知っている。
「それにさぁ、ずーっとレトルトの事見てんじゃん。」
「…え??」
「……。無自覚こっっわ。」
え…確かにレトさんが俺のとなりに座ってたけど………うっしーのことみてたはずなんだよ。だけど、けど、…やっぱり分かんない。
「納得してないって顔だな……。」
やれやれと肩を落としてうっしーがぐいっとお酒を飲み、俺に睨みをきかせてビシッと指をさした。
「だぁぁぁあ!!もう!!!お前は、無自覚で、レトルトの事が、好きなんだよ!」
「さっさと気づけよ…ったく。」
「…すいませ…ん?」
謎に俺は謝ってしまった。
「わりぃと思うんなら気づけよ。…………まだ、俺らも時間あるし、手伝うからよ。」
適当おじさんも、親指を立てている。
喋るのが面倒くさいのだろう。
俺の初恋…………見つかるかな……。
小さな不安を胸に抱えて、二人の協力のもと、話を再開した。
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