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 五ヶ月が過ぎた。

 また上司は俺に小切手を書くように言ったが、0と書いて突っ返した。眉根を寄せた上司は、それでもホテルを取ったらしい。バカかこいつ。

 当日の夕方、俺は彼に言う。

 「今夜メシ行きません?」

 「急だな」

 「もう予約しちゃったんですけど。ホテルに連絡してチェックイン遅らせてもらえばいいでしょ」

 「強引だね。いいよ、付き合うよ」

 彼は微笑んで、仕事に戻った。

 必死で記憶を辿り、彼の好きそうな店を急いで調べて予約を入れた。彼が喜んでくれたので、俺も嬉しかった。誰かが喜ぶことで嬉しいと思える気持ちが、俺にもあったことが驚きだった。

 ホテルにも一応行ったが、彼を責め立てる気になれず、服を着たまま雑談をして終わった。

 夜も更けて電車がなくなった頃、予め呼んでいたタクシーに彼を乗せた。

 「送ってくれるのなんて初めてじゃないか」

 「そうでしたっけ。じゃあまた」

 「待ってよ。僕の部屋来る?」

 「……いいです」

 「じゃあきみの部屋は?」

 「……」

 タクシーの運転手がチラチラこっちを見ている。俺は乗り込み、行き先を変更してもらった。

 「きみ優しいんだろ」

 几帳面にシートベルトを締めながら彼は笑っている。

 「なんでそう思うんですか」

 「わかるさ。シャイだからそれを誤魔化してるだけだよ」

 「じゃあそういうことでいいです」

 俺の部屋に着いてから一度だけセックスした。コンビニで買ったビールを飲み、煙草を吸いながらくだらないテレビを見て、眠った。彼と寝たのがこれで最後になるとは、そのときは思いもよらなかった。

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