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#デートDV
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それから数日間、二人は寝る前のお喋りを楽しんだ。女の子と話すのが久しぶりだったはずなのに、まるで友達との会話のように次から次へと言葉が溢れてくるのだ。
それだけじゃない。彼女の口から出てくる言葉は翔の興味を引いたし、その先を知りたいと言う欲求まで現れた。
なんだか不思議な子だな……そう思いながら、最後の夜は家族に『カブトムシを探してくる』と言って早めに別荘を出た。
いつものように塀を登り、彼女が来るまでまだ時間があるし、気長に待とうと思っていた時だった。なんと彼女の部屋の窓が開いたのだ。まさかと思って目を凝らすと、窓から顔を出す彼女が見えた。
「あれっ、今日は早いね」
喜びを噛み締めながら話しかけると、彼女は驚いたように目を見開いた。
「えっ……もういたの?」
「うん、実は明日帰るんだ。だからいつもより長くお喋りできたらなぁって思って」
明日と聞いて寂しそうに俯く様子にドキドキした。君も僕と同じように残念だと思ってくれた?
「君に会えたおかげで、今年の夏はすごく楽しかったよ」
「うん……私も……。ねぇ、ロミオくんは何が好きなの? 聞いてみたい」
「僕? うーん……なんていうかさ、好きなものはいろいろあるんだ。スイちゃんみたいに絞れてないんだけど、天体、農業、雑貨、歴史、語学、文化、そういうことをこの先勉強したいって思うんだ」
「……私なんかよりずっとすごい……」
「そんなことないよ。お互いやりたいことがやれている未来だったら幸せだね」
君と話していて、やってみたいことが増えて来た。そのためにもっとたくさんのことを学びたいと思うんだ。
「ロミオくんって不思議ね……私にやる気を漲らせてくれる」
「あはは! でも似たようなことをこの間言われたかも。最初の夜に話した星が好きな問題児にさ、『先輩と話してると勇気が湧いてくる』って。意味わからなかったけど」
その時だった。彼女の部屋のドアが開き、母親が入ってきたのだ。
「萌音? 起きてるの?」
モネ? あの子はモネっていうのか。だからあの時驚いたんだ。納得しつつも、彼女の母親にバレないように塀から降りようとする。しかしバランスを崩して塀から落ちてしまった。
「いてて……」
思わず言葉が漏れてしまい、慌てて両手で口を塞ぐ。バレただろうか。早く逃げないと。だが足が痛み、上手く立ち上がれない。
マズいぞ……そう思った矢先、門が勢いよく開く音がした。裸足のまま駆け寄る萌音の姿に、翔は嬉しい反面、顔を見られたらマズいとも思う。
悪いことはしていないけど、父親の仕事に影響が出たりしたらマズい。
「大丈夫⁉︎ 怪我してるの⁉︎」
萌音が翔の顔を覗き込もうとした瞬間、反射的に彼女の頭を引き寄せてキスをした。それから体の力が抜けた萌音を、翔はぎゅっと強く抱きしめる。
「ごめん……顔は見ないで」
「えっ……」
萌音が顔を上げようとした時、遠くから母親の声が響く。彼女が気を取られたその隙に、翔は痛みを堪えて走り出した。
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