岐阜×愛知 ナチュラルに岐阜が愛知のことを監禁してます。苦手な方はブラウザバック
「なあ岐阜、今日も外に出ちゃあかんの?」
朝食の席で、愛知は目玉焼きにフォークを刺しながら首を傾げた。窓から差し込む柔らかな日差しが、彼の金色の髪を輝かせていた。まるい緑色の瞳には子供のような純粋さが宿っている。
岐阜は黙ってコーヒーを一口すすり、低く落ち着いた声で答えた。「……お前が怪我したら困るだろ」
テーブルの下で、岐阜の長い指が無意識に愛知の脚を撫でるように触れている。その接触にも愛知は特に気づく様子もなく、「またそんなん言うて」と笑う。
「おれそんな弱くないのに」
岐阜の顔に一瞬だけ緊張が走った。切れ長の瞳が鋭くなりかけるが、すぐに抑えるように瞼を伏せる。
「……昨日も滑って転びそうになったじゃねえか」岐阜の声は穏やかだが、その言葉には命令に近い響きがあった。
「あれは床が濡れてただけだがね」愛知は頬を膨らませる。その仕草があまりにも子供っぽく可愛らしいので、岐阜の表情が緩む。
本当は昨日のことなんて覚えていない。岐阜が勝手に見守りカメラで確認したことだ。けれど愛知はその矛盾に気づかない。むしろ「岐阜が心配してくれる」ことに幸せを感じているようだった。自分の首筋にある小さな赤い跡も、昨夜岐阜が嫉妬してつけたものだと知らずにいる。
「食べ終わったら映画でも観るか」岐阜は立ち上がり、愛知の頭に手を置いた。その手の温もりに愛知は満足そうに目を細める。
テレビボードに向かう岐阜の後ろ姿を見ながら、愛知は不意に言った。「岐阜の手って大きいね。おれの全部包み込めそうや」
岐阜は振り返り、唇の端だけで微笑んだ。「そうだな。お前のことは何からも守れるよ」
愛知は嬉しそうに頷く。その無邪気な信頼こそが、岐阜にとって何よりの麻薬だった。
リビングに戻ると、愛知は既にソファでくつろいでいた。岐阜は彼の隣に座り、肩に腕を回す。二人の間に流れる空気は恋人同士のそれでしかない。ただ一つ違うのは——。
岐阜の部屋に置かれた大きな液晶ディスプレイには、この家の全ての部屋を映し出す監視カメラの映像が並んでいたこと。そして窓枠には鍵のかかる格子が取り付けられていたこと。誰も来ない玄関のポストには、もう何週間も手紙が溜まっていたこと。愛知の携帯電話には岐阜以外には電話もかからないこと。
それでも愛知は疑問を持たない。岐阜と一緒にいる幸せしか知らないから。岐阜の愛の中に完全に囲われていることを幸せだと感じているから。
「岐阜」映画を観ながら、愛知が唐突に言った。「おれたちずっとこうやって過ごせるかな」
岐阜の腕に力が入る。「ああ。ずっとだ」飛騨弁で呟く声には確信が満ちていた。「俺たち以外、何もいらねぇだろ」
愛知は頷き、岐阜の胸に顔を埋めた。「うん……岐阜さえいればいい」
岐阜は震えるほど強い感情を噛み締めながら愛知の背中を抱きしめる。この小さな世界が永遠に続くように。他の誰にも邪魔されないように。
閉じられた窓の外では桜が散っていた。季節が巡ろうとも、二人の時間だけは止まったまま——愛という名の檻の中で。
夕方になると空が茜色に染まり始めた。岐阜はベランダに出てタバコに火をつけた。窓越しに見える愛知は本を読んでいる。静かにページをめくる指先まで愛おしい。
「……ずっと見られてる気がするんよ」不意に愛知が言った。目線は本に落としたまま。
岐阜はタバコの煙を吐き出しながら戸惑う。「なんで?」
「いや……なんか肌寒いっていうか」愛知は首を振る。「気のせいかもな」
岐阜の頬に冷たい汗が伝った。監視カメラの位置がバレかけている。しかし愛知はそれ以上追求しなかった。本当に疑念など持っていないのだ。
夜になり愛知がシャワーを浴びている間に、岐阜は寝室を片付けていた。クローゼットの奥深くには古い日記帳が積まれている。それは愛知への想いを綴ったもので、最初の一冊は百年前の日付が書かれていた。
岐阜は日記帳を抱きしめる。紙からは古びた匂いがした。「やっと……やっと一緒になれたな……愛知」
風呂場から聞こえる水音を聞きながら、岐阜は懐から小さな注射器を取り出した。愛知が眠っている間だけ打てる安定剤。彼の鈍感さを維持するための処方箋だった。
「今度は絶対離さない」
岐阜は静かに決意を込めて呟く。鏡に映った自分の瞳が異常に光っていた。
風呂場のドアが開き、湯気に包まれた愛知が現れた。まだ髪も乾かしていない。水滴が白い肩に落ちる様子があまりにも扇情的で、岐阜は思わず目を逸らした。
「どうした?」愛知が近づいてくる。
「なんでもない。早く髪乾かせよ」岐阜は愛知の頬を手で包み、軽く口づけた。
愛知は幸せそうに目を閉じる。これが全て。他の世界なんて要らない。
岐阜は愛知をベッドに横たえ、カーテンを閉めた。月明かりすら入ってこない完璧な闇の中、二人は一つになった。愛知の白い肌が闇の中で浮かび上がる。
「岐阜……もっと……」愛知の声は甘く溶けるように響いた。
岐阜は愛知の首筋に顔を埋める。強く吸いついて新たな印を残す。「愛してる……」低く囁いた。
愛知は小さく喘ぎながら頷く。彼が感じているのは快楽だけ。束縛も恐怖も彼の純粋な心には届かない。
岐阜の歪んだ愛情を受け止められる唯一の人間として。
「ずっとこうしてようね……」愛知の言葉は岐阜の耳元で天使のように囁かれた。
岐阜は涙ぐむほどの幸福を感じながら頷いた。明日も明後日も十年後も百年後も。永遠にこの閉ざされた楽園で——愛知だけを守るために。他の誰にも触れさせないために。
二人の影がひとつになって揺れる。暗い部屋の隅に積まれた古い日記帳は、新しい章を待ち続けていた。
続きはいつか出します。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!