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第十二章
揺るがぬ決意
― 絶対的強者―
「っは……こ、怖かったぁ……だ、誰……あの人……」
琥珀は全身の力が抜けたように、その場へぺたんと座り込んだ。
膝は小刻みに震え、呼吸は乱れたまま整わない。
そんな琥珀の背中を、詞葉は何も言わず優しく撫で続ける。
静まり返った夜空の下、羅刹がゆっくりと口を開いた。
「あの男は――邪神の右腕と呼ばれる存在。それ以上でも、それ以下でもありません……邪神に最も近い、絶対的存在です」
その言葉に、夜の冷たい空気がさらに重く沈む。
「つまり……邪神を倒す前に、必ず……」
煉華が静かに呟く。
「あの男を相手にしなければならない……」
続けるように蒼紫も小さく言葉を紡いだ。
あの底知れない威圧感。
思い出しただけで指先が震え、背筋が凍りつく。
あれほどの強者が、まだ邪神本人ではない。
その事実が、四人の胸に重くのしかかった。
「…っ(……自分たちの力を過信していたわけじゃない)」
蒼紫は静かに拳を握り締める。
だが、初めて真正面から対峙した”絶対的恐怖”は、自分たちの認識がいかに甘かったのかを、嫌というほど思い知らせていた。
重苦しい沈黙が流れる。
誰も言葉を発することができない。
そんな四人を見つめながら、羅刹は静かに続けた。
「ですが……右腕だけを警戒していてはなりません」
四人はゆっくりと顔を上げる。
「邪神の配下には、強大な力を持つ者達が他にも存在します。それぞれが一国を滅ぼしかねないほどの力を有しております」
その言葉に琥珀は思わず息を呑み、詞葉は錫杖を握る手に力を込めた。
「そんな相手と……私たちは戦わなきゃいけないのね……」
煉華は静かに目を閉じる。
恐ろしい。
逃げ出したい。
そう思わなかったと言えば嘘になる。
だが――。
ゆっくりと目を開いた煉華の瞳には、先ほどまでの迷いはなかった。
「……それでも。」
その一言に、三人が顔を上げる。
「世界を守れるのが私たちだけなら、逃げるわけにはいかない。」
真っ直ぐ前を見据え、煉華は力強く言い切った。
「怖いよ。でも、それ以上に……守りたいものがあるから。」
その言葉に、蒼紫は静かに頷く。
「もちろんです。私は皆と共に戦います。」
「わ、私もです……! 皆さんと一緒なら、きっと乗り越えられます!」
「へへっ! さっきは腰が抜けちゃったけど……次は負けないんだから!」
四人は互いに顔を見合わせ、小さく笑みを浮かべた。
その笑顔はまだ幼く、決して強がりではない。
恐怖を知ったからこそ生まれた、本物の覚悟だった。
羅刹はそんな四人を見つめ、誰にも気づかれないように口元に笑みを浮かべた
「(やはり……この方々こそ四神に選ばれし、真の巫女……。この方々なら…きっと…)」
夜空には静かに星々が瞬いていた。
迫り来る終焉を前にしても、四人の胸に宿った決意だけは、決して揺らぐことはなかった。
コメント
1件
「絶対的強者」って言葉が、もう読んでるこっちの心臓まで縮み上がらせたよ……。でも煉華の「怖いけど守りたいものがある」って台詞、めちゃくちゃ響いた。恐怖を知ってから決意する強さって、かっこいいだけじゃなくてちゃんと人間っぽくて好き。四人が互いに笑い合うシーン、じんわり温かくなった。次も絶対読むね🌙