テラーノベル
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青年の後をついて行くと、そこには沢山の水槽が置かれていた。
だが、“全て壊されていた”
水槽の中の液体が零れ、床が水に濡れていた。
「・・・なに・・・この水槽・・・?」
「・・・これは・・・クローン制作の水槽に似ている気が・・・」
ブラックはそうこぼした。すると、青年が答えた。
「・・・そうだ。この研究所では“クローン制作”を“していたんだ”」
「・・・クローン制作・・・“していた”・・・?」
青年のこぼした言葉に、違和感を感じたすまない先生は首を傾げた。
「・・・あぁ・・・ここのクローンを作っていた博士は・・・“俺が殺した”」
「・・・!ころ・・・した・・・!?」
突然こぼしたその言葉に、すまない先生は目を丸くした。
「・・・あいつは、クローンを使い捨てを平気でしやがるやつだ。・・・しかも、そのクローンが使えなくなったら、平気で捨てるやつだ・・・」
そう青年はこぼした。青年は拳を強く握りしめていた。
「・・・ですが、あなたもクローンでしょう?何故、博士を?そんな理由の為だけに殺した訳ではないでしょう?」
そうブラックが聞くと、青年は無言でとある部屋のドアを開けた。
「あ、せんせぇ!」
「せんせぇだぁ!」
そのドアが空いた途端、小さな声が聞こえた。
すまない先生たちは目を丸くしていた。
そこに居たのは、“小さな生徒たち”だった。
「・・・せんせぇ、その人たちだぁれ?」
「・・・俺の知り合い。」
そう青年はこぼした。そう零すと、小さな銀さんたちは興味を持ったようにすまない先生たちに近寄った。
ふと気づいた。銀さんたちの姿が幼いのと、服がブカブカなのに。
「・・・この子たちは・・・まさか・・・?」
「あぁ・・・“生徒たちのクローン”だ」
その言葉に、銀さんたちは目を丸くしていた。
「・・・俺たちの・・・クローン?」
「・・・いつの間に・・・!」
「俺が生徒たちを連れて来いって言われていたのは、“生徒たちのクローンを作る為”だ」
「「「「「「「!」」」」」」」
「・・・銀さんたちの、クローン?」
青年は頷いた。
「・・・お前らすまないスクールは、全員特別な力を持っている。・・・だから博士は、お前らのクローンを作って、その能力を持っているクローンたちを操って、悪いことを企んでいたんだ。・・・だが、この子たちはその能力を上手く扱うことが出来ない。今までだって、沢山沢山怪我をしたんだ」
よく見ると、子供たちの頬や手や足には酷い怪我や怪我が治ったばっかりのカサブタのような物が無数にあった。
「・・・この怪我は・・・?」
「能力と、博士からの暴力だ」
「・・・ひでぇ・・・」
思わず、生徒たちはそうこぼした。銀さんは小さな銀さんそっくりのクローンの頭を撫でる。すると、嬉しそうに笑顔を綻ばせた。
「・・・ですが、あなたは何故そこまでして?・・・酷いこと言うようですが、クローンからすれば、クローンはまた作られる存在です。・・・この子達に執着する意味は一体・・・?」
ブラックの疑問に、青年は答えた。
「・・・俺も最初は、その考えだった。クローンはどう足掻こうと、もがこうと、作られる存在だし、寿命もある。頭では分かっているんだ・・・だが・・・」
青年は自分の胸を掴んだ。
「・・・“あの子たちは酷使される為に生まれてきた訳じゃない”。そう感じるんだ。なんで、こう感じるか、俺には、“空っぽの俺”には分からない。」
そう青年は答えた。それは、苦しそうに、辛そうにこぼした。
きっと、その気持ちがなんなのか分からないのだろう。
クローンとして生まれ、その気持ちの“名前”を知らない。だから、この気持ちに苦しそうにしているんだ。と
「・・・それは、“生徒たちのことを大好き”だと思ってる気持ちじゃないかな?」
そうすまない先生がこぼした。
「・・・俺が、この子たちのことを、好き?」
クローンは首を傾げる。
「好きにはね、色んな種類があるんだよ?愛情、友情・・・沢山の種類の“愛”があるんだ。・・・それをひとつにまとめようとすると、難しく、苦しい。・・・きっと君は、この子たちのことが大好きだから、大切だから。悩んで、迷うんだ。・・・それはもう、“立派な人間”だよ」
「・・・俺が・・・人間?・・・俺はクローンだ・・・お前の遺伝子から作ったコピーだ」
「コピーでも、クローンでも、そんなふうに迷ったり、この子たちを助けようと動くことは、立派な人間だよ。」
その言葉に、青年は目を丸くした。
「・・・俺が・・・人間・・・?」
「うん」
青年は大層驚いたように目を丸くしていた。
コメント
2件
最後の文で感動した!あの人はクローンだけど…あんなに優しい心を持ってるなんて正真正銘人間だよ!人間でしかない! 博士まじ嫌いなんやが?暴力、使い捨てのコマのように扱うのやばすぎ!てかクローンって作るのそんな時間かからんのかな?銀さん達のクローンあったしなぁ…