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はる☻
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デスクに戻ると、パーテーションの向こうから吉田さんがこちらを見て、案の定これ以上ないくらいニヤニヤと笑っていた。
「…マジで、なんなんすか?」
「んー? 別にー?」
すべてを見透かされているような気がして、いたたまれなくて居心地が悪い。
僕は自分の頭を叩き起こすように、両手で頬をパンパンと引っ叩いて、無理やり仕事モードに気持ちを切り替えた。
やがて十二時のチャイムが鳴り、周囲の上司たちが一斉に席を立ち始める。
「おい山中、一緒にメシ行こーぜ」
「え、嫌です」
「おーいっ! ふはは、なんでだよ!」
「だって吉田さん、絶対また意地悪なこと言うじゃないですか」
僕はわざとムッとした顔を作って吉田さんを睨みつけた。
「おー怖い怖いっ、ぐははは!」
「ほんとなんなんすか!もう、早く行きますよ!」
ガハガハと豪快に笑う吉田さんを置いて、僕はスマホを片手に先に席を立った。
なんだかんだ言って、吉田さんはいつもこういう時に踏み込みすぎず、丁度いい距離感で接してくれる。
はやちゃんへの歪んだ依存や、しゅんとの息が詰まるような深い熱量とは違う、嫌われる心配もないような、肩の力の抜けた軽い関係が今の僕にはすごく心地よかった。
「おいっ!先輩を置いて行くな!!」
後ろからドタドタと追いかけてくる足音を聞きながら、僕たちは会社の近くにあるいつもの定食屋へと向かった。
吉田さんはサバの味噌煮定食、僕は焼鮭定食の食券を買い、カウンター席に隣同士に腰掛けて料理を待つ。
会社のすぐ近くにあるため、店内は社食並みにうちの社員で賑わっていた。
「うわー…お前の相手いるぞ」
不意に吉田さんが僕にしか聞こえないほどの小さな声で、耳元に囁いてきた。
言われてハッと周囲を見渡すと、店の奥にある四人掛けのテーブル席に、しゅんが営業部の人たちに囲まれて座っているのが見えた。
「ちょっと!だから、そんなんじゃないって言ってるじゃないですか!」
「俺、あいつ苦手なんだよな〜」
「え?吉田さんが人を苦手になることなんてあるんすか?それもモテモテで人気者のしゅん?」
「いや〜、世間的にはそうなんだけどさ。怖ぇーもん、あいつ。…お前と一緒にいたら、めっちゃ睨んでくるしよー」
「え、しゅんがそんなことします?」
周囲に声が漏れないように、僕たちはカウンター席で身体を寄せ合い、お互いの耳元で内緒話をする。
「あ、やべっ。俺、今また睨まれたわ」
「えっ…?」
僕は慌てて奥のテーブル席の方へと視線を走らせた。
すると、しゅんは営業部の人たちの会話に耳を傾けながらも、僕とバチッと目が合った瞬間、いつも通りのもの凄く優しい笑顔を浮かべて、僕に向かって小さく手を振ってくれた。
僕はそれに応えるように、小さく手を振り返す。
なんだよ、全然睨んでなんかいないではないか。
いつもの優しいしゅんだ。
「うわ〜、山中、お前…あいつには本当に気をつけろよ?絶対裏あるぞ、あの男」
吉田さんのその根拠のない発言に、僕は胸の奥がチクリと騒ぎ出すのを感じていた。
そうこうしているうちに、カウンター越しにアツアツの定食が運ばれてきた。
僕たちは他愛のない世間話をしながらも、休憩時間が終わる前にとパパッと箸を動かして平らげ、足早に店を出た。
オフィスビルへと向かう並木道を歩きながら、吉田さんが前を見つめたまま、急に真面目な声トーンに変えた。
「お前さぁ、本当にあいつでいいわけ?」
「え?なんでですか?…あ、いや、そもそもそんな関係じゃないですから!」
「はいはい、一旦そういう事にしておいてあげるけど。あいつさ、あまり良くない噂聞くぞ?」
良い噂はよく聞くけど、悪い噂なんて僕は一度も聞いたことがなかった。
僕は歩く足を少しだけ緩めて、不思議そうに首を傾げる。
僕から見たしゅんは、昔からずっと優しくて、眩しくて、誰よりも素敵な人に思えたから。
昨夜の暴力はまた別だけど…。
でもそれだって、僕が無神経に彼を傷つけて追い詰めたというはっきりとした理由があったわけだし…。
でも、気になる。
社内でも完璧だと言われているあの男の、良くない噂。
「あの…、それって具体的にどんな噂なんですか?」
「あのな?あいつってお前に近付く…、 あ、やべっ!」
吉田さんが言葉の途中で、突然声を詰まらせて硬直した。
次の瞬間、僕と吉田さんの肩が後ろから強めの力でグッと同時に掴まれた。
「っ、…!」
突然の事に大慌てで後ろを振り向くと、そこにはいつの間にか背後に忍び寄っていたしゅんが立っていた。
隣を見ると、吉田さんは完全に焦った様子でパチパチと大きな目を泳がせ、完全に固まってしまっていた。
「しゅん、お疲れ。びっくりしたよ…」
「おつかれ、じゅう。…吉田さんも、お疲れ様です」
しゅんの声には、どこかいつもと違う低く硬いものが混ざっている気がした。
けれど僕を見つめる彼の瞳はいつもと変わらず温かくて優しい。
「ところで…吉田さん。じゅうと、さっきからなんの話していたんですか?」
しゅんの口元は笑っているのに、その目は冷徹に吉田さんを射抜いている。
吉田さんは僕に助けを求めるように、まんまるな目をうるうるとさせてこちらを見ている。
これ以上ここにいたら、また昨夜のような大惨事になってしまう。
僕は焦って吉田さんの代わりに答えた。
「あ、えっとね!仕事の話!連休明けで経理部も仕事が山ほど溜まっててやばいですね、って話をしてたの!」
「あぁ〜!! そ、そうなのよ!そっちも連休明けは大変でしょ?ね!曽野くん!」
吉田さんが僕の嘘に飛びつくようにして、大慌てで話を合わせる。
「あぁ…、そうですねぇ」
しゅんは僕の顔と吉田さんの顔を交互に見つめ、それ以上は追及せずにゆっくりと僕の肩から手を離した。
「じゃあ!俺はちょっと、まだ午後からの急ぎの仕事が残ってるから先戻るわ!じゃあね、お疲れ!」
吉田さんはそれだけ言って、しゅんの視線から逃げるようにそそくさと一人でオフィスの中へ走って去っていってしまった。
to be continued….
コメント
6件
吉田さんも出てきた! 残すはだいちゃん?出てくるのかなー まじで今までの甘々が恋しいよー 今も今でめっちゃおもしろすぎるけど

コメント失礼いたします。 ❤️さんの嫉妬、格好良くて大好きです!🤍さんといちゃいちゃ出来る日が来るのを楽しみにしてます!

コメント失礼いたします。 いつも更新楽しみにしております。読ませていただいてありがとうございます。