「確かに、観戦中はあの迫力に飲み込まれて、仕事のことも全部忘れて没頭できた。動く度にコートに響くシューズの音、ドリブルした時のボールの音、選手達の息づかいまで聞こえるようだった。本当にバスケは最高だな」
龍聖君の声……
私の大好きなこの声。
淡々と話してるようだけど、ちゃんと優しさも感じられる素敵な声。
「鳳条君だってNBAでもプレーできたと思うよ~。高校時代からたくさんスカウト来てたし~」
視線を熱く送る絵麻ちゃん。
「まさか。NBAなんてとんでもない。日本のチームからはスカウトはあったけど、俺には将来やるべきことがあったから。それに、俺なんか圧倒的に身長が足りない」
「だよなぁ、向こうで活躍してる数少ない日本人は2メートル超えてるし」
「え! 2メートル? そんなに高いんだ~。鳳条君が2メートルもあったらちょっと嫌かも」
本気で引いてる絵麻ちゃん。
でも、確かに、そこは絵麻ちゃんに賛同する。
「まあ、龍聖には最高のテクニックがあったし、半端なく上手かったから、バスケを辞めたのはもったいないよな」
碧がしみじみと言った。
私もマネージャーとして近くで見ていたけれど、あの俊敏な動きとしなやかなボールさばきには、みんなが圧倒されていた。
「でも、鳳条君は、高校時代も今もずーっと1番素敵だから。何をしててもいつだって誰よりも輝いてる」
ニコッと笑う絵麻ちゃんは、強力な龍聖君推し。
私達とはクラスが違ったから「鳳条」「水原」って苗字で呼び合ってはいるけれど、絵麻ちゃんのアプローチは昔からすごかった。
アイドルみたいな絵麻ちゃんにはいつも男子からの告白が絶えなくて、他の男子と付き合いながらも、1番は龍聖君だと公言してた。
でも龍聖君は……
こんな可愛い女の子に好かれてるのに、なぜか全然付き合おうとはしなかった。絵麻ちゃんはバスケ部だけじゃなく、学校中のアイドルだったのに。
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