すごくもったいないと思う。
龍聖君の好みは、全く謎だ。
「もし俺が少しでも輝けていたとしたら、それは碧がいたからだ。俺は碧のおかげで頑張ってこれた。いつも励まされてたから」
「やめろよ。それをいうなら俺だって」
「碧はポイントガードとしてピカイチだった。バスケを続けてたら最高の選手になれたのは間違いない」
龍聖君も碧も、高校生のレベルは超えていた。
素人の私でもわかるくらいに。
バスケの試合は1試合5名がそれぞれに「ポイントガード」「シューティングガード」「スモールフォワード」「パワーフォワード」「センター」というポジションで戦う。
碧は、パスやドリブルが上手いからポイントガード。
全体的なフォメーションの指示を出したり、パスをどう出すかなど、常に試合を読む力が必要で、碧はバスケの試合においてはリーダーシップを発揮していた。
みんなから信頼され、チームを牽引している姿は、普段の可愛いイメージとは違っていてとてもカッコ良かった。そういうギャップにやられる女子も少なくなかったと思う。
だけど、碧もまた、そんな女子達が大勢いたにも関わらず誰とも付き合っていなかった。
「バスケはもちろん続けたかったけど、でも実際は生活していかなきゃならないし。結局、もう1つの夢だった美容師を選んでしまったよ。アシスタントの頃は仕事が終わってからずっと毎日カットの練習とかしてたし、遊びでバスケをする余裕も無かったなぁ」
確かに碧の努力は半端なかった。
早く上手くなりたい、お客様に喜んでもらいたいと、夜中まで店に残って一生懸命練習していたのを覚えている。
手が荒れたり、時にはケガをしたりして……
どんなにつらくても、疲れても、笑顔を絶やさない碧のことを、私は親友として誇らしく思いながら、内心ではとても心配していた。
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