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ある日の放課後、空き地にはいつものように夕暮れ時特有の長い影が伸びていた。しかし、その日の空気はいつもとは決定的に違っていた。剛田武、通称ジャイアンの瞳に宿っていたのは、いつものガキ大将らしい粗暴な情熱ではなく、もっと暗く、ねっとりとした支配欲だった。
のび太は、いつものようにジャイアンに呼び出され、震えながら空き地の土管の前に立っていた。「ジャイアン、今日は何…?」その言葉が終わる前に、ジャイアンの巨大な手がのび太の胸ぐらを掴み、力任せに土管の中へと引きずり込んだ。
そこから始まったのは、単なる喧嘩やいじめの範疇を遥かに超えた、一方的な蹂躙だった。のび太がどれほど泣き叫び、許しを請うても、ジャイアンの耳には届かない。ジャイアンにとって、のび太はもはや「劣った友だち」ではなく、自分の歪んだ欲望をぶつけるための「所有物」へと成り下がっていた。
翌日からのび太の日常は、音を立てて崩れ去った。登校中、教室の影、放課後の裏山。ジャイアンは影のようにのび太を追い詰め、執拗にその身を汚し続けた。「誰かに言ったら、今度こそ本当に壊してやるからな」という低い脅しが、のび太の口を硬く閉ざさせた。
ドラえもんは、のび太の異変に気づいていた。元気がなく、青白い顔をして、時折何かに怯えるように震える親友。しかし、のび太はドラえもんの問いかけにさえ「何でもない」と答える。ジャイアンから受けた辱めがあまりに深く、ドラえもんにさえ、その汚れを知られたくないという絶望的な自尊心が彼を縛り付けていた。
しかし、事態は最悪の結末へと向かう。ジャイアンの暴力と欲望はエスカレートし、彼の心からも「罪悪感」というブレーキが完全に消え去っていた。一方、のび太の心は、度重なる暴行によって修復不可能なほどに摩耗していった。
ある雨の日、のび太はふらふらと、ドラえもんが未来へ帰るために使う引き出しの前に立った。彼はもう、ひみつ道具で仕返しをしたいとも、助けてほしいとも思えなかった。ただ、この汚れた自分という存在を消してしまいたかった。
のび太が姿を消した後、ようやくドラえもんは事の真相を知ることになる。残されたわずかな痕跡と、のび太のあまりに悲痛な記憶の断片。ドラえもんの瞳から光が消え、怒りを超えた虚無がそこにはあった。
その後、空き地からジャイアンの姿も消えた。彼がどこへ行ったのか、あるいはドラえもんが「どのような道具」を使って彼を裁いたのかを知る者は誰もいない。ただ、野比家には戻ることのない子供を待ち続ける静寂だけが残り、町の子供たちは、かつてそこにいた二人の少年について語るのを、いつしかやめてしまった。