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えれめんたる
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んっ、ここは?
目を開けると、見慣れない天井が見える。そっと体を起こし部屋を見回す。畳に襖、遠くからわずかに香が漂う。きっと、本殿の一室なのだろう。
「起きたんだね。」
パッと声のする方に顔を向けると狐面の彼が立っている。この彼は、本物なんだろうか、それとも先ほどの何かなのだろうか。恐怖感と警戒心を隠せないまま彼を見る。
「ふふ、僕のことを疑っている顔だね。安心して、僕は君が見たアレとは違うよ。本物の僕だからね。」
私の気持ちを見透かすようにあの優しい声でそう言った。
「キ、キツネさん、本当にキツネさん?」
「ふふ、そうだよ。お嬢さん。」
彼にそう呼ばれると何だかホッとして、力が抜ける。そんな私を見て、キツネさんは仮面の下から柔らかく微笑みながら、湯気の立つ器を差し出した。なかには、さっき作ったばかりであろう粥が入っており、一口食べてみるとナズナやセリ、ハコベラなど様々な味がして少し独特ではあるが、その味に安心感を覚え、生きていることを感じた。
「君が見たものは、君に深く関係している。」
私が食べ終えたのを見計らって彼はそう言った。
「そ、それはどういうことですか?それに私に起こってること知ってるんですか?私、今までこんな経験したことなかった。貴方と会ってからこんなことばかり起こってる。」
「うん。全部知ってるよ、君がどれだけ怖い思いをしているか。ごめんね。もっと早く助けてあげるべきだったね。」
彼は珍しく笑いもせずに、真面目な声色で私に謝った。
彼は少し迷ってから、狐面越しに私をまっすぐ見て話し出した。この木は昔から人の命を奪うと言われていたらしい。彼が以前に話した話はだいたい合っているようだ。そして、この木が生まれた時のことについても彼は話してくれた。人が死んで流れた血で生まれた、それがあの赤い桜だ。
「そ、その桜と私はどのような関係が?」
「君にというより君の祖先が関係しているんだよ。」
私はその言葉を聞いもよく理解できず、なぜ私の祖先が関係しているのか不思議でならなかった。
「君の祖先にはね、春彦というお祖父様がいたんだ。その人は、心優しくて勇敢な人だった。だから、みんなが怖がっているさまざまな噂があるこの木を切ろうとしたんだよ、それが君の家系を恐怖に陥れる始まりになってしまった。」
お祖父様は、よくできた人で村のみんなにも慕われていたそうだ。そんなお祖父様は、村人たちのために木を切ろうと、斧を何度も木に叩きつけとうとう切り倒した。しかし、そこから私の一族は不審な死を遂げる者がよく出た。まず、木を切り倒した本人である春彦お祖父様は次の日に心臓発作で突然倒れそのまま亡くなったらしい。次に、跡取りであった長男が気が狂ったように叫び暴れ出し、挙句には鎌で自分の首を切ってしまった。そんなことが立て続けに起こり、私の一族はどの世代でも誰かしらは不審な死を遂げてきたそうだ。しかも、そのすべてはあの桜の木があった場所で起こったのだ。時と一族の血が流れ、その血を吸って大きくなったかのようにまたあの桜が枝を伸ばし、赤い花を咲かせるようになったという。私は彼から話を一通り聞き、得体の知れない恐ろしさが心の底から込み上がってきて、瞬きすることさえも忘れてしまっていた。
「君はあの赤い桜の木に選ばれてしまった。この世代では君があの桜の血となる。」
その言葉に私は何も考えられず、ただ一点を見つめる。しばらくしてから、どうして、どうしよう、私は死ぬの?という思いが一気に頭によぎる。
「安心して。僕が守る。アレがどんな姿をしていても、決して信じないで。僕だけを見つけて。」
ギュッと彼の腕に抱かれていた。その腕は温かく、どこか懐かしさを感じる。目を瞑って彼の体温を感じる。トクトク、と彼の心臓が脈打ち、その音に合わせるように私の心臓が音を立てる。だんだんと瞼が重くなってくる。
「おやすみ。×××。」
何で私の名前を、と言いかけてそこで意識が途切れた。